交通事故の解決実績

加重障害・既存障害 示談 弁護士費用特約 自転車vs四輪車・バイク 骨折 会社員 非該当 後遺障害等級変更 14級 医師面談

【頬骨骨折】【加重障害】てんかんの既往障害9級により頬骨骨折による疼痛が非該当とされていた被害者について、紛争処理申請により既往障害の等級を下げ、約550万円で示談解決した事例

Qさん 50代・男性・会社員

【頬骨骨折】【加重障害】てんかんの既往障害9級により頬骨骨折による疼痛が非該当とされていた被害者について、紛争処理申請により既往障害の等級を下げ、約550万円で示談解決した事例

解決事例のポイント

①医師面談を実施して、既存障害てんかん9級と判断していた自賠責保険の見解をくつがえす
②後遺障害等級14級で550万円の示談解決

相談前

Qさんは50代の会社員男性です。

交差点を自転車で通行していたところ、四輪車にはねられてしまうという交通事故に遭い、左頬骨を骨折してしまいます。

Qさんは、子供のころから、てんかんの治療歴があり、これまでに①中学生の時、②昭和60年、③平成18年と3回のてんかん発作がありました。

平成18年の発作は大発作で、今回の交通事故時においても抗てんかん薬(ヒダントール200㎎)の処方を受けていました。

Qさんは、頬骨骨折により口周囲のしびれなどの症状が残してしまっていたため、保険会社を通じて後遺障害の申請を行いましたが(事前認定)、既存障害が「服薬継続によっててんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの」と捉えられるとして9級10号の認定を受けてしまい、口周囲のしびれなどの症状は障害等級表上の障害の程度を加重したものとは捉えられないことから、非該当となる旨の判断がなされてしまいます。

Qさんは、てんかんの発作は治まっているし、無関係なてんかんを理由に顔面の症状が非該当とされていることに納得がいかないとして、法律相談に来られました。

法律相談

Qさんには、加重障害についての説明を差し上げました。

てんかんと頬骨骨折とは同一部位ではないとして裁判で戦う選択肢もありましたが、Qさんは絶対に裁判はしたくはないという意向であったこともあり、まずは異議申立てで既存障害の後遺障害等級を争うという方針にしました。

具体的には、既存障害が12級13号以下の後遺障害等級であると認定できれば、局部の神経症状となるため、従来の自賠責保険の解釈によったとしても「同一の部位」とは判断されなくなるので、「服薬継続によっててんかん発作が完全に抑制されている」ものではなく、服薬がなかったとしてもてんかん発作が起こることは無いということを目標にしました。

てんかんに関する医学的資料の分析

今回の交通事故に関する資料のみならず、Qさんのてんかんに関する資料を取り付けて調査しました。

分析してみたところ、平成18年の大発作の頃はQさんの脳波にスパイクウェーブが見られ異常所見が確認できるものの、ここ最近はスパイクウェーブもシャープウェーブも確認できず、脳波検査の異常所見はありませんでした。

また、Qさんが現在も処方を受けているヒダントール200㎎というのは、てんかん発作を抑えるためのものではなく、予防薬に過ぎないことが判明します。

当該調査結果を元に異議申立てをすることも考えられましたが、Qさんは裁判を絶対にしないという意向であったため、裁判での後遺障害等級の変更という途がなく、確実に自賠責保険の等級判断を変更させる必要がありました。

そこで、上記調査結果に加えて、医師面談を実施し、てんかんに関する医学的意見書を入手することにしました。

てんかんに関する医師面談と医学的意見書の作成

てんかんの専門医と医師面談のアポイントを取り、Qさん同席のもと医師面談を実施しました。

医師の見解としても、当方の見解と同様、平成18年には脳波の異常所見があったものの、最近の脳波検査で異常はないとのことでした。

それに加え、Qさんの最近のてんかんの病状についての説明もしてくれて、今後においてもてんかん発作を起こすおそれはないと断言してたいただくことができました。

また、自賠責保険が出した非該当の認定理由も見てもらったところ、ヒダントール200㎎というのは予防薬で合って、てんかん発作の抑制を目的としたものではないので、「服薬継続によりてんかん発作がほぼ完全に抑制されているもの」と認定した自賠責保険の判断は誤りであると断言してたいただくことができました。

異常の内容をこちら側でまとめ、医師に署名押印を頂くことで、既存障害9級10号を否定する意見書を作成してもらうことができました。

紛争処理申請による後遺障害等級14級9号の獲得と約550万円での示談解決

この医学的意見書をもとに異議申立てをしましたが、自賠責保険の判断は変わらず、非該当のままでした。

しかし、この判断は明らかに誤っていたため、すぐに紛争処理申請を行ったところ、紛争処理員会はてんかんの既存障害9級10号を否定してくれて、頬骨骨折による神経症状14級9号を認定してくれました。

そして、この後遺障害等級を元に示談交渉を行い、裁判基準の満額に近い約550万円での示談解決をすることができました。

弁護士小杉晴洋のコメント:自賠責保険は既存障害については甘めの認定を行うので注意が必要です

異議申立てや紛争処理申請というのは、本来、被害者に残った後遺症が酷いことを立証するものです。

これに対して、既存障害の異議申立てや紛争処理申請というのは、過去の後遺障害が軽いことを立証するものですから、通常の異議申立てや紛争処理申請とやることが逆になっています。

その点で難しさもありますが、当事務所の弁護士は、こうした加重障害事案を多く扱っていますので、既存障害の後遺障害等級を下げて、今回の交通事故における後遺障害等級を獲得することを得意としています。

自賠責保険は既存障害の後遺障害等級認定については、浅い調査で等級認定してしまう傾向がありますので、自賠責保険の既存障害等級認定については、異議申立てや紛争処理申請で判断が覆る可能性が高いです。

既存障害の存在によって後遺障害等級を否定もしくは軽減されてしまったという方については、被害者側専門の弁護士に相談されることをおすすめします。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。