交通事故の解決実績

裁判 自転車vs四輪車・バイク 靭帯損傷 会社員 逸失利益 医師面談 12級 素因減額・因果関係 加重障害・既存障害

【腱板断裂】保険会社からは腱板断裂の後遺障害等級12級6号は分娩麻痺の影響によるもので交通事故と関係がないと主張されていたケースで、医師の意見書を取り付け全面勝訴した事案

Oさん 40代・男性・会社員

【腱板断裂】保険会社からは腱板断裂の後遺障害等級12級6号は分娩麻痺の影響によるもので交通事故と関係がないと主張されていたケースで、医師の意見書を取り付け全面勝訴した事案

解決事例のポイント

① 元々出生時の分娩麻痺の後遺症を有していた被害者について、交通事故での腱板断裂による肩可動域制限は分娩麻痺の影響によるものであって、交通事故との因果関係は無く、あったとしても素因減額がなされるべき事案であるとされていたケースにおいて、交通事故から7日後の肩MRI画像から、棘上筋の萎縮が確認できず、本件事故時の肩の状態はまったく問題が無かったということを医師面談による医学的意見書から立証し、交通事故と肩可動域制限との因果関係を認めさせ、素因減額も一切なされなかった
② 逸失利益について、原則的な計算である交通事故前年の年収を基礎収入額とせずに、交通事故前3年間の平均値を基礎収入額として採用させた

 

法律相談前

Oさんは40代会社員の男性です。

自転車で走行していたところ、バイクに衝突され、右肩をケガしてしまいます(腱板断裂)。

Oさんは、生まれた時から分娩麻痺の後遺症を有していましたので、分娩麻痺と腱板断裂との関係がどうなるのか不安で、弁護士に依頼することにしました。

 

分娩麻痺の既往症あるも腱板断裂で後遺障害等級12級6号を獲得

Oさんは、リハビリによって、腱板断裂を負ってしまった右肩の上がりづらさをある程度は回復させましたが、それでも左肩と比べて3/4以下の制限が残ってしまったため、後遺障害等級の申請を行うことにしました。

診断書などに既往症として分娩麻痺の事実が記されていましたので、肩可動域制限(機能障害)での後遺障害等級を獲得することが、最初の難関となりましたが、交通事故によって腱板断裂となったこと⇒腱板断裂によって右肩が動きづらくなってしまったことを丁寧に立証し、なんとか後遺障害等級12級6号の獲得に成功しました。

 

示談交渉の決裂―分娩麻痺による素因減額の主張―

被害者請求により獲得した後遺障害等級12級6号をもとに示談交渉を開始しました。

ところが、保険会社の回答は、自賠責保険が後遺障害等級12級6号を認定してはいるが、当社としては分娩麻痺が影響していると考えることから、後遺症に関する慰謝料や逸失利益の支払はできないと回答されてしまいます。

その後も交渉を続け、なんとか後遺障害等級12級6号に基づく後遺症慰謝料や逸失利益の因果関係は認めさせましたが、分娩麻痺もあいまっての後遺症と評価できることから、最低3割~5割の素因減額がなされなければいけないという回答どまりでした。

これらの回答に納得がいかなかったことから、Oさんに相談の上、横浜地方裁判所に提訴することにしました。

民事裁判 横浜地方裁判所第6民事部(交通部)

保険会社側のエース級の弁護士の登場

示談交渉段階では、保険会社の担当者と交渉を行っていましたが、裁判に移行すると、保険会社側の弁護士が登場します。

保険会社側の弁護士といっても一律同水準というわけではなく、数十件・数百件程度の経験の弁護士や、書籍などの出版歴もあるエース級の弁護士など様々です。

Oさんのケースは、難解なケースですので、数千件の交通事故取扱い経験のある当該保険会社のエース級の弁護士が登場することになりました。

私も何件も引き合いとなって戦ったことがありますが、とても交通事故実務や理論に詳しい先生です。

裁判でも、因果関係や素因減額について激しく争われることが予想されたため、あらかじめ医師面談を行い、こちら側の主張を補強しておくことにしました。

医師面談の実施-棘上筋の萎縮の進行から分娩麻痺の影響を考察する―

争点となると考えられるのは、因果関係や素因減額についてで、具体的には、Oさんが元々有していた分娩麻痺が、交通事故後の腱板断裂や肩可動域制限にどのような影響を与えたかです。

腱板断裂や分娩麻痺についての医学文献、肩の後遺症に関する因果関係や素因減額の裁判例を事前に調査した上、肩専門医の先生のお話を伺いにいきました。

そうしたところ、当該先生は、交通事故から7日後に撮影された肩MRI画像について着目され、Oさんの右肩棘上筋に「萎縮」がないことを指摘されました。

次に、交通事故から3か月後に撮影された肩MRI画像について着目され、その際には、Oさんの右肩棘上筋の「萎縮」が一気に進行していることを指摘されました。

これらはすなわち何を意味するかというと、仮に分娩麻痺の影響によってOさんの右肩の可動域制限が生じていたのであれば、交通事故の時に既に右肩棘上筋の「萎縮」所見があったはずであるが、交通事故から7日後にこれがないということであれば、Oさんの右肩棘上筋の状況は、交通事故時も何らの問題が無かったことを裏付け、他方で、交通事故から3か月後の肩MRI画像所見で初めて右肩棘上筋の「萎縮」所見が見つかったのであれば、それは腱板断裂によって肩を動かせない状態が続いたことにより生じたものであると考えられることになります。

Oさんの肩関節可動域制限は、腱板断裂による肩関節の拘縮によって起きたもので、この肩関節の拘縮に分娩麻痺が一切影響を及ぼしていないことが、交通事故から7日後の右肩棘上筋の状態から明らかなになるわけです。

以上の内容のお話をお伺いできたことから、これらをこちらで意見書案としてまとめ、それについて先生に署名押印を頂き、医学的意見書を完成させました。

因果関係及び素因減額についての完全勝訴

被告側からの反論が出される前に医学的意見書を取り付けていたため、保険会社側の弁護士が初めて出頭した裁判期日において、上記の医学的意見書を提出しました。

そうしたところ、分娩麻痺による因果関係の否定や素因減額の主張について、保険会社側の弁護士が主張を撤回してくれ、すぐに裁判上の和解が成立する運びとなりました。

逸失利益 交通事故前年の年収ではなく交通事故前3年の平均値を基礎収入額として採用

この裁判のメインの争点は、因果関係及び素因減額でしたが、他にも逸失利益の基礎収入額も争点となりました。

逸失利益というのは、交通事故での後遺症によって働きづらくなった分を損害賠償請求していくというもので、元気だったころの年収(基礎収入額)に、後遺障害等級に応じた働きづらさの%(労働能力喪失率)を掛け算し、それがどのくらいの年数続いたのか(労働能力喪失期間)を更に掛け算して、損害額を算定することになっています。

この基礎収入額は、交通事故の直近の年収が1番将来の年収に近いであろうと考えれますので、原則は、交通事故の前年の年収を採用することとされています。

しかしながら、Oさんの場合は、妻の出産や子育ての関係で、交通事故の前年はドライバー職から事務職に異動して仕事をセーブしていた時期であったため、交通事故の前年の年収を採用されてしまうと、基礎収入額が低くなってしまうという状況にありました。

そこで、これらの事情を立証し、かつ、将来ドライバー職に復帰する予定であったことを立証して、交通事故前年の年収ではなく、交通事故前3年の平均値を基礎収入額として採用するよう求めていきました。

裁判上の和解では、原告側の主張が認められ、無事、交通事故前3年の平均値が基礎収入額として算定されて逸失利益の計算がなされました。

 

弁護士小杉晴洋のコメント:保険会社側の弁護士が有能でも、証拠さえ揃えることができれば勝訴できます

Oさんの件は、少なくとも神奈川県内では最も交通事故案件を取り扱っているであろう有能な弁護士が担当として就きました。

そのため、激しい戦いが予想されましたが、良質な医学的意見書の入手に成功したため、保険会社側の先生もすぐに裁判上の和解に応じてくれました。

この医学的意見書の入手に失敗していた場合や、そもそも医学的意見書を入手しようとしなかった場合には、因果関係の否定や、少なくとも素因減額がなされたおそれがあるといえます。

民事裁判というのは、証拠勝負です。

いかに、損害賠償請求を裏付けるための証拠を用意できるかによって勝敗は決まります。

損害賠償請求訴訟というのは、損害論だけでなく、保険の知識・理解も必要で、それよりも医学的な証拠を入手する力と医学と損害との結び付けの力が要求されます。

これは弁護士であれば誰でもできるわけではありませんし、医者であってもできない分野です。

交通事故に遭われた方は、被害者側専門の弁護士に相談されることをお勧めいたします。

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。