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裁判 家屋改造費 駐車場 歩行者vs四輪車・バイク 頭・脳 高齢者 無職 主婦 高次脳機能障害 後遺障害等級変更 2級

【高次脳機能障害】①約2200万円の示談提示⇒約8300万円で解決。②介護状況を具体的に立証し、自賠責3級認定を裁判で2級獲得

Cさん 北九州市・70代・男性・無職

【高次脳機能障害】①約2200万円の示談提示⇒約8300万円で解決。②介護状況を具体的に立証し、自賠責3級認定を裁判で2級獲得

解決事例のポイント

① 自宅での介護状況を撮影して立証することにより、自賠責3級認定を裁判で2級に上げた
② 保険会社が約2200万円の示談提示をしていたが、裁判により約4倍の8300万円で和解解決
③ 70代無職男性について休業損害や逸失利益を認めさせた
④ 家屋改造費全額認定
⑤ 家族の付添費用や介護費用が0円とされていたが裁判で4000万円以上認定

相談前

Cさんは70代の男性で、妻と共に自宅で生活をしていました。

家事は妻がしていましたが、妻も高齢で足が悪かったため、庭の草むしりや買い物は夫のCさんが行っていました。

ある日、駐車場内をCさんが歩いていると、アクセルとブレーキを踏み間違えた車にはねられてしまい、Cさんは脳挫傷や外傷性クモ膜下出血などの傷害を負わされてしまいます。

Cさんは長期間入院することになりますが、Cさんの妻は足が悪いため、Cさんの息子たちも仕事を休んでCさんの入院に付き添ったり、Cさんの家に行き足の悪い母と一緒に暮らすなどして家族一丸となって対応していました。

Cさんは後遺障害の診断を受けることになり、保険会社による後遺障害等級の申請(事前認定・加害者請求)によって、高次脳機能障害による後遺障害等級3級であると認定されます。

そして、保険会社から約2200万円の示談提示を受けました。

Cさんやご家族は、この2200万円という提示が妥当なのかどうか分からず、弁護士に相談してみることにしました。

法律相談

Cさんの息子さんが来所され、法律相談を実施しました。

主に保険会社の示談提示が妥当かどうかについて説明をし、受任することになりました。

以下法律相談時の説明内容の概要です。

1 そもそも後遺障害等級3級というのが妥当なのかどうか精査が必要

息子さんの話によると、元気だった父は、事故後は性格が変わってしまい、感情の起伏が激しくなっているとのことでした。

具体的には、看護師さんに暴力を振るったり、他人を大声で怒鳴ったり、他方で、1日中一言もしゃべらず部屋にひきこもったりするといった状況にあるとのことでした。

また、身体が不自由となっていて、転倒も多く、入浴や食事、トイレ、着替えなどの場面で他人の介護が必要な状況となっているようでした。

2 休業損害や逸失利益は0円でよいのか

Cさんは70代無職の男性ですから、原則は、保険会社の言うように、仕事を休んだことに対する休業損害や、将来仕事ができなくなることに対する逸失利益は認められないことになります。

しかしながら、Cさんの奥さんは足が悪く、草むしりや買い物などはCさんが行っていたとのことでしたので、休業損害や逸失利益が0円でよいのかについては疑問が残る事案でした。

3 付添費用や介護費用が発生する事案である

保険会社の示談提示は主に慰謝料のみで構成されていましたが、Cさんの入院中は、病院で看護師さんに暴力を振るったり、ナースコールを押さずに勝手に動こうとするCさんを抑えるために、ご家族が付き添っておられました。

また、退院後もずっと家族でCさんの介護をしていて、通院の付添いもしていましたが、保険会社の示談提案では、これらのことがまったく反映されていませんでした。

4 家屋改造費が否定されている

Cさん家族は、Cさんが自宅ですごせるように、手すりを付けたり、トイレをバリアフリーにするなどの家屋改造を行っていました。

しかしながら、保険会社の示談提案では、家屋改造費の提案はありませんでした。

民事裁判 福岡地方裁判所小倉支部

1 示談交渉決裂

保険会社に対して、休業損害・逸失利益・付添費用・将来介護費用・家屋改造費などを請求しましたが、支払えないとの回答でしたので、裁判をすることにしました。

2 提訴前の準備
(1)後遺障害等級2級の裏付けを用意する

病院の大量のカルテを取寄せ、後遺障害等級が3級ではなく2級というための裏付けを探しました。

また、Cさんのご自宅にお邪魔し、介護状況を動画や写真で撮影させてもらいました。

(2)Cさんが行っていた家事内容について奥さんと息子さんの陳述書を作成

休業損害や逸失利益の裏付けとして、Cさんの奥さんや息子さんから、Cさんが行っていた家事の状況について話を伺い、陳述書を作成しました。

(3)家屋改造の必要性について資料を入手

Cさんのご自宅にお邪魔した際に、家屋改造後の状況の写真を撮らせてもらいました。

また、昔の写真から、改造前の家の状態の写真を探し出し、家屋改造前後の比較をしやすいようにしました。

3 福岡地方裁判所小倉支部の判断

福岡地方裁判所小倉支部はCさん側の主張をほぼ全面的に認めてくれて、下記の内容での和解成立となりました。

後遺障害等級は3級ではなく2級

Cさんの自宅を撮影した介護状況の報告やご家族の陳述書から、入浴の際はリフトを利用して他者の介助が必要であること、トイレ・食事・更衣等も随時介護が必要になっていること、他人を大声で怒鳴ること、部屋にふさぎがちなこと、一人で外出することはできないことなどを認定し、自賠責保険の後遺障害等級3級の判断を覆し、2級の認定をしてくれました。

入通院付添費・自宅付添費 約250万円

保険会社の示談提案では認められなかった、入通院の際の家族の付添費や、治療期間中の自宅付添費を合計250万円分認めてくれました。

将来介護費 約4000万円

平均余命までにかかると思われる職業付添い人への介護費の支払や家族の近親者介護を考慮し、将来介護費として約4000万円の認定をしてくれました。

家屋改造費 全額認定

家屋改造費は否定されることも多く、また、肯定されたとしても他の家族の便益となるため3割などという形で一部認められることが多いのですが、本件では全額の家屋改造費が認定されました。

休業損害 約80万円

Cさんは交通事故の前に主夫業をしていたわけではありませんが、妻の足の状態からして、一部の家事を担っていたとの認定を得ることができ、約83万円の休業損害が認められました。

逸失利益 約600万円

休業損害と同様、交通事故がなかったとすれば、Cさんが一部家事を担っていたはずで、それが事故のせいでできなくなったとして、逸失利益が約600万円認定されました。

慰謝料 2400万円

和解金合計 約8300万円

弁護士小杉晴洋のコメント:仮に保険会社の示談提案に応じてしまっていたら6000万円以上を損をしているところでした

Cさんのご家族は、約2200万円という示談提案を受けた際、特に否定的な考えは持たなかったそうです。

確かに2000万円を超える金額というのは大金ですし、そのまま示談に応じしてしまう方もいらっしゃるのだと思います。

しかしながら、現に約4倍となる8300万円で解決しているわけですから、仮に示談をしてしまっていたとしたら6000万円以上損をしていたことになります。

保険会社というのは営利企業ですから、なるべく賠償金を低く抑えようとするのが仕事です。

安易に示談に応じてはいけません。

特に後遺症が残ってしまっているケースでは、数百万・数千万円単位で損をすることがありますから、保険会社から示談の提案を受けたという方については、まずは弁護士に相談されることをおすすめします。

当事務所では無料の法律相談を実施しておりますので、お気軽にお尋ねください。

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高次脳機能障害についてはこちらの記事で整理しています。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。