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【高次脳機能障害】医師の意見書が決め手となり、賠償金約2億5000万円獲得

Bさん 福岡県・30代・女性・主婦

【高次脳機能障害】医師の意見書が決め手となり、賠償金約2億5000万円獲得

解決事例のポイント

① 医師の意見書で損害を裏付け約2億5000万円の和解
② 現地調査により介護状況や家屋改造の必要性を証明
③ ご家族の苦労などを陳述書で立証し近親者慰謝料5名分、計1250万円獲得
④ 一度後遺障害等級5級程度とされた裁判所の判断を覆し、後遺障害等級2級での和解解決

相談前

Bさんは、元々は仕事をしておられましたが、出産を機に仕事を辞め、お子様二人を育てる専業主婦でした。

ご家族で幸せに暮らしていましたが、ある日、お子様をベビーカーに乗せて、歩行者信号青表示の横断歩道を渡っていたところ、前方を見ていなかったトラックにはねられてしまいます。

お子様をかばうようにしてはねられたため、お子様も傷を負ったものの後遺症が残るようなケガとはなりませんでしたが、Bさんは頭の一部を削られるほどの頭部外傷を追ってしまい、脳を損傷してしまいます。

生死を彷徨う状態が続き、なんとか一命をとりとめましたが、脳損傷のために感情のコントロールがきかなくなってしまい、ナースコールをむやみに連打するなどの行動に出てしまうようになりました。

旦那様は長期の休暇の休暇を取り、また、田舎で暮らしていたBさんのお父さん・お母さんも病院の近くのマンスリーマンションへ引っ越しをし、3人でBさんの介護を24時間体制で行いました。

入院治療や懸命な近親者付添いの甲斐もあり、Bさんは徐々に回復していきます。

いつまでも入院するわけにもいかないので、Bさん夫妻の実家の近くの病院に入院することにしました。

これは、退院後に、Bさんのお子さんの面倒をBさんの旦那さんのお父さんお母さんが手伝い、Bさんの介護をBさんのお父さんお母さんが行うという体制で乗り切るためです。

ただ、Bさんのお父さんお母さんも高齢ですから、いつまでもBさんの面倒がみれるわけではありません。

そこで、Bさんのお父さんお母さんやBさんの旦那さんが、将来を不安に思い、弁護士のもとへ法律相談に行くことになりました。

法律相談

Bさんのご家族が来所され、法律相談を実施しました。

今後の流れがどのようにして進むのか、また、賠償額はどうなる見込みかについて説明をしました。

以下法律相談時の説明内容の概要です。

1 今後の流れについて
(1)後遺障害等級の申請(高次脳機能障害の特殊性)

そろそろ症状固定となり、退院予定であることを伺いましたので、まず後遺障害等級の申請を行います。

後遺障害等級の申請には、主治医の先生に後遺障害診断書を書いてもらわなければなりませんが、高次脳機能障害の場合は、この他にも複数の書面を書いてもらなければなりません。

基本はこちらで準備するので良いのですが、『日常生活状況報告』のみは、ご家族にご記入いただく必要があります。

ヒアリングを行い、事故前のBさんの状況や現在のBさんの状況に照らすとどのように記載するべきかについてお話させていただきました。

Bさんは現在寝たきりの状況ではありませんが、退院後はご家族の付添いがなければ生活できない状況でしたので、「高次脳機能障害のため、生命維持に必要な身のまわりの処理の動作について、随時介護を要するもの」として後遺障害等級別表一第2級1号に該当することが見込まれました。

(2)損害保険料率算出機構による調査

後遺障害等級の申請を行う場合、損害保険料率算出機構という組織が、後遺障害等級の認定を行います。

通常3か月程度で結果が出ますが、高次脳機能障害の場合は、高次脳機能障害調査のための特定部会に回されますので、審査期間が長くなることがあります。

(3)示談交渉

後遺障害等級の結果が出た後は、その結果に基づいて示談交渉を行います。

交渉は、相手がある話ですので、事案によって異なりますが、当事務所の場合は、保険会社担当者への連絡を密にとり、なるべく1か月程度での解決を目指しています。

ただし、Bさんのケースだと、賠償額が1億円を超えることが予想されたため、1か月以上の交渉期間を要する可能性が高い旨をお伝えしました。

(4)民事裁判

賠償額が1億円を超えるようなケースですと、ほとんどの場合、折り合いがつかずに裁判となります。

裁判となる可能性が高くなることについてもお伝えをしました。

2 Bさんの件で請求することが考えられる損害について

治療費・症状固定後の治療費・将来治療費

治療費については全額相手方の保険会社が病院に支払っていたので問題はない事例なのですが、問題は症状固定日以後の治療費です。

症状固定というのは、簡単に言うと、今後治療を続けたとしても完治が見込めず、後遺症として残りますよと医師が判断することをいうので、症状固定日以降の治療費というのは保険会社から支払われなくなってしまうのが原則とされています。

しかしながら、Bさんは、今後もずっとリハビリを続けていかなくてはいけない状況ですので、症状固定後の治療費や将来治療費を認めさせることができるかがポイントとなると説明しました。

付添費用や将来介護費用

Bさんが交通事故に遭った後、Bさんのお父さんお母さんや旦那さんとで24時間体制で介護を行う、そのためにお父さんお母さんは病院近くのマンスリーマンションに引っ越すといった事情があり、その他にも、退院後にBさんのお父さんお母さんが介護を続けるといった事情が考えらえることから、付添い費用や介護費用が重要となる事案であると説明しました。

また、Bさんのお父さんお母さんがいつまでも介護できるわけではないため、その後の職業介護の費用なども請求していかないといけない旨の説明を行いました。

雑費(入院雑費・将来雑費)

Bさん入院の際の諸費用は日額1500円認められます。

また、Bさんは排泄障害もあったことから、平均余命までのおむつ代などの将来雑費が認められることについての説明を行いました。

そのため、Bさん関係の支出についてレシートなどをまとめておくようお願いをしました。

装具・器具等購入費

介護用ベッド、車いす、杖、リハビリ用シューズなどの装具・器具の購入費が認められることや、それらは一生使えるわけではないため、それぞれの将来の買い替え費用も認められる旨の説明をしました。

装具・器具等購入費もまとめておくようお願いをしました。

家屋改造費・自動車購入費

普通のマンションではBさんは暮らすことができませんので、お風呂など家の改造を施したとのことでした。

また、リハビリにBさんを連れていくため、車いすを載せるための車を購入予定とのことでしたので、これらの請求についても説明しました。

休業損害

Bさんは専業主婦でしたが、事故後家事が一切できなくなってしまっていることから、休業損害として400万円程度が支払われる旨の説明をしました。

逸失利益

Bさんは、子どもたちがある程度大きくなった後は仕事に復帰することを考えていたようでした。

ですので、交通事故がなかったとしたら稼いでいたであろう金額について請求していく旨をお伝えしました。

慰謝料(入通院慰謝料・後遺症慰謝料・近親者慰謝料)

入通院慰謝料としては300万円程度が見込まれること、後遺症慰謝料としては2370万円程度が見込まれることをお話ししました。

また、重度の後遺症を残していますので、これらとは別に近親者慰謝料が認められる可能性がある旨もお伝えしました。

後遺障害等級申請(被害者請求)及び後遺障害等級2級(高次脳機能障害)認定

医師の協力の元、後遺障害等級の申請に必要な書類を揃え、また、Bさんのお母さんに「日常生活状況報告」を記してもらい、後遺障害等級の申請(被害者請求)を行いました。

そうしたところ、見立てどおり、後遺障害等級別表一第2級1号が認定されました。

示談交渉

3億円程度の損害賠償請求を行いましたが、保険会社から示されたのは1億円強の示談案であり、BさんやBさんのご家族と相談の上、裁判をすることにしました。

民事裁判 福岡地方裁判所

1 Bさんが懸命にリハビリをしていたことが逆手にとられる

裁判は、病院や介護施設の記録をすべて取り寄せて行うことになるのですが、そこには交通事故の後、生死を彷徨うような状況であったBさんが、徐々に回復をしていき、その後も懸命なリハビリのもと、家で父母と共に生活できる程度まで回復していった経緯が記されています。

この点を逆手に取られ、保険会社側の弁護士からは、自賠責保険は後遺障害等級2級の認定をしているが、実際の高次脳機能障害等級は5級程度であるとの反論がなされることになり、裁判官もある程度、保険会社側の弁護士の見解を取り入れ、1億円強の和解案を提示してきました。

こちら側としては、この和解案には到底納得できないため、和解に応じることはできないと回答しました。

2 介護状況の調査

現時点で裁判官は、Bさんは徐々に回復してきており、介護はさほど大変ではないのではないかという見解を持っていることが窺われたため、実際にBさんの家を訪れ、写真や動画にて、Bさんの介護の大変さを撮影することにしました。

また、介護ベッド、車いす、杖、リハビリ用シューズなどの装具・器具が具体的にどのようなもので、どのような使用方法をしているのかについても調査をしました。

加えて、家屋改造の具体的内容や自動車購入の必要性についても調査をしました。

3 主治医の意見書作成

裁判所和解案が、こちら側の請求額の半分にも満たなかったため、裁判所の考え方が医学的に誤っていることを伝えるべく、各争点について主治医の先生の見解を伺うことにしました。

(1)近親者の付添いの必要性について

和解案では、完全看護体制の病院であったため、近親者による入院付添いの必要性が否定されていましたが、Bさんは情緒不安定で、院内での転倒事故も複数回起こしていたなどの事情があったため、近親者の付添いは必須であったとの回答を得ることができました。

また、付添人数は1名では困難であることの説明を受けることもできました。

(2)後遺障害等級5級が妥当か2級が妥当かについて

Bさんが外出する際の車いすの必要性や、家での杖の必要性など歩行についての医学的意見を伺い、また、判断力・持続力については、右半球障害による注意抑制障害があり、自身をコントロールできない状態になっているとの意見を伺いました。

その他、画像所見、脳波所見、神経心理学的検査、前頭葉機能、情報処理機能、運動機能、身の回りの動作機能、てんかん発作、認知・情緒・行動障害、社会生活・日常生活に与える影響、将来仕事や家事に復帰する可能性などについて意見を伺いました。

(3)今後のリハビリや治療について

将来治療費の必要性・相当性についての主治医としての見解を伺いました。

(4)将来の介護について

ずっと父母が介護するわけにはいかないため、将来職業付添人への介護依頼が必須になるとの意見を伺いました。

(5)装具・器具購入費について

手すり、入浴用品、杖、下肢装具、車いす、介護用ベッドなどの装具・器具の必要性について医学的観点から説明を頂きました。

4 裁判所和解案が誤りであることの指摘

上記2について、介護状況の調査内容について報告書をまとめました。

また、主治医の先生の意見についてこちらで意見書の草案をつくり、それを先生にチェックしてもらって、意見書を提出しました。

その上で、原告Bさんの後遺障害等級を5級相当とする裁判所和解案は誤りであり、将来介護費などを否定する和解案の計算内容も誤りであると指摘しました。

5 再和解案

以上の介護状況報告や主治医の意見書の立証が奏功し、裁判所和解案の内容が改められ、無事和解成立となりました。

要点は下記のとおりです。

後遺障害等級は5級ではなく2級

主治医の意見書や、介護状況報告による介護の過酷さを裁判官も認めてくれ、自賠責保険の認定どおり、後遺障害等級は2級と判断されました。

入通院慰謝料・後遺症慰謝料・近親者慰謝料合計4000万円

入通院慰謝料330万円・後遺症慰謝料2370万円に加え、近親者慰謝料5名分として1300万円が認められました。

この近親者慰謝料の認定額は他の高次脳機能障害2級の裁判例と比較してかなり高額ですので、介護状況報告や医師の意見書によって、ご家族の苦労や苦悩を裁判所がわかってくれた結果だと思われます。

合計2億5000万円で和解成立

慰謝料の他、症状固定後の治療費・将来治療費、付添費用、将来介護費用、雑費、装具・器具購入費、家屋改造費、休業損害、逸失利益などを医師の意見書や介護状況報告から認定をしれくれたため、遅延損害金などの調整金を加味し、合計2億5000万円での和解成立となった。

弁護士小杉晴洋のコメント:裁判官の納得する証拠を作ることが重要

このケースはご家族や病院の協力も得られた事案でしたので、申請用の書類もスムーズに整い、見立て通りに後遺障害等級2級を獲得することができました。

ただし、裁判所が予想に反し、自賠責保険の等級判断である2級ではなく、被告の弁護士主張の5級の和解案を提示してきたので驚きました。

交通事故訴訟の場合、裁判所というのは、十分な反証のない限りは自賠責保険認定の後遺障害等級を前提として話を勧めることになっていて、被告からは特段、重要な証拠がなされていなかったケースでしたので、裁判所和解案は証拠をよく読んでいない不当なものだと思っています。

ただし、担当裁判官はその人で、彼には判決を出す権限がありますから、なんとか裁判官の納得する証拠を作らなくてはなりません。

そこで、ご自宅にお邪魔して介護状況や介護用品の撮影を行わせていただき、また、主治医の先生と協力して詳細な医学的意見書を作成しました。

無事、約2億5000万円というBさんの実情の大変さに見合う賠償額を獲得することができましたが、これらの動きを取らなければ、賠償額は半分程度になっていました。

足を使って、裁判官の納得する証拠をそろえることが重要であると感じさせる事件でした。

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。