交通事故コラム

外国人 子ども 裁判手続

【外国人と交通事故】外国籍の子どもが交通事故遭った場合、日本の裁判所に訴え提起できるのか?その場合の手続はどうなるのか?

2022.01.29

【外国人と交通事故】外国籍の子どもが交通事故に遭った場合、日本の裁判所に訴え提起できるのか?その場合の手続はどうなるのか?

外国人であっても日本の裁判所に訴え提起することができます

外国籍の子どもが日本で交通事故に遭ってしまった場合、慰謝料などの請求で日本の裁判所を利用できるのでしょうか?

日本国憲法第32条では「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」と規定されていて、裁判を受ける権利を「日本国民」に限定していません。

そして、日本国内で発生した事故に基づく損害賠償請求に関する訴えについては、日本の裁判所が管轄権を有するとされています(民事訴訟法第3条の3第8号)。

また、準拠法としては、外国籍の子どもが交通事故に遭った場合には、日本の法律が適用されることになります(法の適用に関する通則法第17条等)。

外国籍の子どもが日本国内で交通事故に遭った場合、日本人の子どもが交通事故に遭った場合と同様、日本の法律で、日本の裁判所に提訴することができると考えてよいです。

ただし、日本の子どもが交通事故に遭った場合と比べ、損害賠償請求訴訟を起こす手続がやや異なりますので、注意が必要です。

 

外国籍の子どもが交通事故損害賠償請求訴訟を提起する場合の手続

日本の法律では、未成年者(18歳未満。民法第4条)は法定代理人によらなければ訴訟行為をすることができないとされています(民事訴訟法第31条本文)。未成年者が交通事故被害に遭った場合に、子どもと親のどちらが損害賠償請求訴訟を提起するのかについての詳細は、こちらのページをご覧ください。

この法定代理人というのは、ほとんどの場合、親権者を指しますが(民法第818条1項,民法第824条)、日本人が損害賠償請求訴訟を提起する場合は、訴状の附属書類として、戸籍謄本を裁判所に提出することによって、法定代理人親権者であることを証明することになります。

では外国籍の子どもが損害賠償請求訴訟を提起する場合は、どうしたらいいのでしょうか?

戸籍制度が無い国の外国籍の子どもが交通事故損害賠償請求訴訟をする場合の手続

戸籍制度を用いているのは、日本と台湾くらいで、他の国には戸籍制度というもの自体が存在しません。

しかし、日本で交通事故損害賠償請求訴訟を提起するには、交通事故に遭った子どもの親権者であることを証明しないといけません。

では、どのようにして、交通事故に遭った子どもの親権者であることを証明して、損害賠償請求訴訟を提起したらいいのでしょうか?

戸籍制度が存在しない国について、親子関係を証明する方法としては、

①当事者が未成年であることがわかるもの

②親子関係がわかるもの

の2点が必要となっています。

①当事者が未成年であることがわかるものについては、日本の住民票で足ります(当事者の生年月日が確認できます。)。

②親子関係がわかるものについては、当事者の出生地が日本以外であった場合と、日本であった場合とで異なります。

出生地が日本以外であった場合は、領事館・大使館で親子関係証明書を取得します。なお、親子関係証明書を取得した場合には、日本語の翻訳文をつける必要があります。

出生地が日本であった場合には、出生事項記載証明書を最寄りの役所で取得することができますので、それを提出します。

以上の内容をまとめると、外国籍の子どもが損害賠償請求訴訟を提起する場合、

①日本の住民票

②親子関係証明書(大使館・領事館で取得)とその日本語翻訳文or出生事項記載証明書(最寄りの役所で取得)

を取り付けて提出するということになります。

 

【参考】

・外国人が日本で子供を産んだときの届出について(法務省HP)

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji15.html#name1

 

・親子関係証明書の取得方法

在日米国大使館

https://jp.usembassy.gov/ja/passports-ja/proof-parent-child-relationship-ja/

在中国日本国大使館

https://www.cn.emb-japan.go.jp/itpr_ja/shoumei_syussei.html

駐日大韓民国大使館

https://overseas.mofa.go.kr/jp-ja/wpge/m_11911/contents.do

タイ王国大阪領事館

http://www.thaiconsulate.jp/passport_0/

 

戸籍制度がある国(台湾)の外国籍の子どもが損害賠償請求訴訟をする場合の手続

戸籍制度がある国というのは、日本と台湾の2か国だけです。

台湾国籍の子どもが、日本で交通事故に遭ってしまった場合は、台湾戸籍を取り付けて、法定代理人親権者であることを証明しなければ、損害賠償請求訴訟を提起することができません。

台湾の戸籍は、台湾現地の戸政事務所でのみ発行可能です。

郵送申請や代行業者による申請などもてきますので、台湾戸政事務所より戸籍謄本を取り寄せ、これに日本語の翻訳文をつければ法定代理人の証明となります。

(台湾の戸籍謄本の申請について https://www.roc-taiwan.org/jpna_ja/post/6510.html 台北駐日経済文化代表処Webサイトより)

 

外国籍の子どもが交通事故に遭ってしまった場合の注意点まとめ

以上のとおり、外国籍の子どもが日本で交通事故に遭ってしまった場合、住民票や親子関係証明書(又は出生事項記載証明書)を提出することにより問題なく日本の裁判所を利用できます。

ただし、交通事故によって後遺症を残してしまった場合には、その慰謝料額や逸失利益などの損害賠償額の算定で、日本人の子どもが交通事故に遭ってしまった場合と異なる取り扱いがなされることがありますので、外国籍の子どもの交通事故損害賠償請求訴訟というのは、難しい類型に属することになります。

小杉法律事務所では、外国籍の子どもの交通事故事故案件も取り扱っております。

示談交渉による解決から、裁判による解決まで扱っておりますので、外国籍のお子様が交通事故に遭われたという方は、お気軽にご相談いただければと思います。

交通事故被害に遭われた方であれば、日本人であっても、外国人であっても、法律相談料は無料とさせていただいております。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。