交通事故コラム

子ども 裁判手続

【未成年者の交通事故】子どもが交通事故に遭った場合、被害に遭った子どもが裁判を起こすのか、親が裁判を起こすのか?など

2022.01.29

【未成年者の交通事故訴訟】子どもが交通事故に遭った場合、被害に遭った子どもが裁判を起こすのか、親が裁判を起こすのか?など

親(親権者)が訴訟提起します:子ども(未成年者)は訴訟提起などの訴訟活動をすることが原則として禁止されています

子どもが、交通事故被害に遭った場合で、慰謝料などの損害賠償請求の裁判をするという場合、裁判を起こすのは、子ども自身になるのでしょうか、それとも親になるのでしょうか?

未成年者が裁判の当事者となる場合、民事訴訟法では、成人の場合とは異なる制度を用意しています。

具体的には、民事訴訟法第31条は「未成年者・・・は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。ただし、未成年者が独立して法律行為をすることができる場合は、この限りでない。」と規定しています。

未成年者は、自身では、裁判での請求・主張や証拠の提出などの訴訟行為をすることができないのです。

そうすると、子どもが交通事故の被害に遭った場合で、慰謝料などの支払を求めて裁判をするという場合、原告は子ども自身となりますが、訴えの提起をするのは、その子の法定代理人ということになります。

そして、この法定代理人というのは、原則として、親権者のことをいいます(民法第818条1項,民法第824条)。

したがって、交通事故の損害賠償請求訴訟をする場合、訴えの提起をするのは、交通事故被害に遭った子どもの親権者ということになります。

なお、これと同様に、交通事故加害者が未成年者の場合で、その加害者に対して損害賠償請求訴訟を提起するという場合は、被告は未成年である加害者の子となりますが、実際に被告として訴訟活動をするのは、原則として法定代理人である加害者の親権者ということになりますので、訴状には、加害者の情報のみならず、その親権者の氏名・住所を記載しなければなりません(民事訴訟法第133条2項1号)。

※加害者である未成年者の運転について、親の監督責任を問う場合には、親自身が加害者と扱われますので、親自身が被告となります(民法第714条,民法第709条(最高裁判所昭和49年3月22日判決 民集28巻2号347頁))。

 

両親がそろって訴訟提起をしなければならないのか?父母の一方の判断で訴訟提起をすることができるのか?

未成年者の交通事故被害について、裁判を起こすことができるのが親(親権者)であるとして、親(親権者)は父母いずれかの判断によって損害賠償請求訴訟を起こすことができるでしょうか?

たとえば、父は損害賠償請求訴訟に積極的だが、母は保険会社との示談解決を望んでいるといった場合、父は母の反対を押し切り、交通事故損害賠償請求訴訟を起こすことができるのでしょうか?

答えは、父の判断のみで損害賠償請求訴訟を起こすことはできません。

また、母の判断のみで、保険会社と示談することもできません。

これは、民法において共同親権の原則というのがあり、「親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。」とされていることに基づきます(民法第818条3項本文)。

したがって、損害賠償請求の裁判を起こすかどうかの判断も、保険会社との示談をして解決するかどうかの判断も、父母が共同して行わなければならず、一方の判断のみで、裁判したり、示談したりすることはできないのです。

ただし、父母の一方が親権を行うことできないといった事情がある場合には、他の一方が親権を行使することが許されていますので、この場合は、父母のいずれか一方の判断のみで損害賠償請求訴訟を提起したり、保険会社と示談解決をしたりすることができます(民法第818条3項ただし書)。

 

子どもの交通事故について弁護士に依頼する場合は、子どもが手続をするのか?それとも親が手続をするのか?

子どもが交通事故に遭った場合、子どもというのは未だ働いていませんので、交通事故による影響が将来どのように響くのか、非常に難しい問題をはらみます。

ですので、適正な慰謝料額などの損害賠償金を獲得するためには、交通事故被害者側専門の弁護士に依頼されることをおすすめします。

では、弁護士に依頼するのは、交通事故被害に遭った子ども自身が行うのか、それとも、その親(親権者)が行うのかという問題が生じますが、弁護士に依頼するのは、原則として親(親権者)ということになります。

そして、共同親権が原則とされていますので(民法第818条3項本文)、離婚や死別などによって親権者が1人ということでもない限り、両親そろって弁護士と委任契約を締結する必要があります。

 

交通事故被害にあった際は未成年だったが、その後成人した場合はどうなるか?

交通事故被害に遭った際は未成年でしたが、治療が終わり、いよいよこれから保険会社と示談交渉をしようか、裁判しようか等という際には、成人に達していたという場合はどうなるでしょうか?

まず、民法が改正され、令和4年4月1日から、「年齢18歳をもって、成年とする。」と定められましたので(民法第4条)、18歳の誕生日を迎えた段階で、法的には未成年者ではなく、成人と扱われることになります。

そして、交通事故被害に遭った際に17歳以下であったとしても、その後18歳に達した場合は、自身で保険会社と示談交渉をしたり、損害賠償請求訴訟を起こすなり、弁護士に依頼するなりする必要があります。

ただし、実際には、交通事故の後に、子どもが18歳に達したという場合であっても、親御さんと共に法律相談に来られる方が多いです。

実際問題は、親が一切の口出しができなくなるというわけではありませんが、法的には、18歳以上になった場合は、本人がどのように解決するか、弁護士に依頼して解決してもらうかを決めないといけないということになっています。

 

親(親権者)がいない子どもが交通事故に遭ってしまった場合は、どうなるのか?

民法では「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と規定されていて(民法第5条1項本文)、民事訴訟法では「未成年者・・・は、法定代理人によらなければ、訴訟行為をすることができない。」とされています(民事訴訟法第31条)。

そして、その法定代理人というのは、原則として親権者であると定められています(民法第818条1項,民法第824条)。

なお、養子縁組関係にある場合は、養親が親権者ということになります(民法第818条2項)。

では、親や養親がいない子どもの場合は、どうなるのでしょうか?

この場合は、未成年者に対して親権を行う者がないときは、未成年後見が開始されると規定されていて(民法第838条1号)、未成年後見人が法定代理人となります。

未成年後見人は、最後に親権を行っていた親が死亡してしまった場合で、その親が遺言で未成年後見人を指定していた時は、その者が未成年後見人となったりすることがありますが(民法第839条)、多くの場合、未成年後見人を親が指定することなく突然亡くなってしまったりしますので、家庭裁判所が児童相談所などからの請求を受けて、未成年後見人の指定を行います(民法第840条)。

未成年後見人には、親族が選任されることもあれば、弁護士などの専門家が選任されることもあります。

したがって、その未成年後見人が、交通事故損害賠償請求訴訟を提起するか、保険会社と示談するか、弁護士に依頼するかなどを決めることになります。

 

未成年者の交通事故事件の解決法

未成年の子どもは、まだ定職に就いていないことがほとんどですので、交通事故によって負ってしまった後遺症・後遺障害が、将来の仕事にどのような影響を及ぼすのかの判断が非常に難しく、また、成長過程にあるため、骨折などの影響がどのように成長を阻害するのかといった後遺症・後遺障害の判断も非常に難しいものとなっています。

そのほか、無駄になってしまった学習塾代はどうなるのか、親が仕事を休んで病院に付き添った場合の補償はされるのか、授業に出れなくなり留年してしまったが余分にかかった授業料や就職遅延による損害の賠償はなされるのかなどの子どもの交通事故固有の論点も登場します。

小杉法律事務所では、未成年の子どもが車やバイクや自転車に轢かれてしまったという交通事故の損害賠償請求事件を数多く取り扱ってきており、子どもの交通事故固有の論点に精通しています。

お子様が交通事故に遭われてしまったという方は、無料の法律相談を実施しておりますので、まずはお問合せいただければと思います。

未成年者の交通事故の解決事例

9歳の小学生に対して交通事故加害者の大人が怒鳴りつけたというケースにおいて、裁判基準よりも増額させた慰謝料額を認めさせた事例

10代の女子のむち打ち被害について、弁護士による異議申立てを行うことにより、自賠責保険会社の非該当判断を後遺障害等級14級9号の判断に変更させた事例

小学生女児の腓骨遠位端線損傷被害について、ロールレントゲンの撮影をし、異議申立てによって後遺障害等級13級8号を獲得し、約700万円で示談解決した事例

10代男子学生の外傷性クモ膜下出血について、紛争処理申請を行うことにより後遺障害等級12級13号を獲得し、約1000万円で示談解決した事例

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。