交通事故コラム

自転車事故

自転車運転者講習

2020.09.17

1 自転車運転者講習とは

自転車運転者講習とは、正式には「自転車の運転による交通の危険を防止するための講習」(道路交通法第108条の2第1項14号)といい、以下の内容となっています。

① 14歳以上

② 3年以内に2回以上の危険行為を行い、違反切符を交付された者

は自転車運転者講習を受けなければなりません。

14歳以上ということになっていますので、成人だけでなく、中学生や高校生などの未成年者も対象となります。

上記の①及び②の要件を満たす方には、各都道府県の公安委員会からの受講命令が出されます。

自転車運転者講習の時間は3時間で、講習手数料は5700円です。

なお、公安委員会からの受講命令に従わず受講をしないでいると、5万円以下の罰金が科されます(道路交通法120条1項17号)。

自転車運転者講習では、違反者に対して遵守すべき交通ルールの再徹底について指導するほか、遵法意識の欠如や個々人の違反傾向といった違反者の特性に着目し、主として、従来の自己の運転行動がいかに危険であるのかを気づかせ、運転行動の自発的な変容を目的とする教育を行っています。

 

2 自転車運転者講習の対象となる危険行為14種類

下記の⑴~⒁の危険行為を、3年以内に2回以上行って違反切符を交付されると、自転車運転者講習を受けなければならなくなります。

⑴ 信号無視(道路交通法第7条)

自転車の場合で車道を通行しているときは交通信号(交差点の上に設置されている丸い灯火の赤、黄、青の信号)と、歩道通行しているときは歩行者用信号(横断歩道に設置されている人型の赤・青の信号で「自転車/歩行者専用」の補助標識がある場合)の2種類の信号に従わなければなりません。
交通信号が黄色の意味は黄色になった瞬間からその交差点(停止線から先のエリア)に歩行者、自転車他、車両すべては進入してはいけないこと、赤は停止位置(停止線)を超えて交差点に進行してはならないこと、また、人型信号の場合は、青の点滅が始まってからは自転車(歩行者も)は道路の横断を始めてはならず、赤色は道路を横断してはならない(道路交通法施行令第2条・信号の意味)と定められており、これに違反した場合を指します。

⑵ 通行禁止違反(道路交通法第8条第1項)

自転車の場合、大きな立体交差道路のオーバーパスやアンダーパスで歩道が無い部分では自転車通行禁止の標識が設置されている場合があり、高速道路や自動車専用道路でも自転車通行禁止の標識が設置されていますが、その道路を通行した場合は通行禁止違反になります。

⑶ 歩行者用道路での徐行義務違反(道路交通法第9条)

歩行者用道路とは歩行者天国などの車道を一時的に歩行者に開放している場所のことを言い、その場所で所轄警察署から通行を許可された自転車などの車両が通行する場合、道路交通法第9条では「歩行者用道路では特に歩行者に注意して徐行しなければならない」と定められているので徐行しなかった場合は違反となることを指します。

※「徐行」の定義

徐行とは、道路交通法第2条第20号では「車両等が直ちに停止することができるような速度で進行することをいう。」と定められています。

⑷  通行区分違反(道路交通法第17条第1項,第4項又は第6項)

道路交通法第17条第1項では「車両は歩道と路側帯と車道の区別がある道路においては、車道を通行しなければならない。」と定められていますので、自転車も車両ですから意味無く歩道を走ってはならず、また、同条第4項では「車両は道路の中央部分から左側を通行しなければならない」と定められているので、道路の右側を逆走してはならず、更に、同条第6項では路面電車の停車する駅部分や広い道路の横断歩道の中央部分で見られる外側の黄色線に沿って内側に白線で囲まれている「安全地帯」、黄色線で囲まれていて内側が白の斜線がゼブラ状に引かれている「立ち入り禁止部分」、消防署の前に見られるゼブラ状の白線斜線を白線で囲んだ「停止禁止部分」に入ってはならない」と定められているので、これらに違反した場合は通行区分違反となります。

⑸ 路側帯での歩行者妨害(道路交通法第17条の2第2項)

構造的に歩道が無い道路で歩行者が安全に通行出来るための部分を明示するため、車道の端に白線を引いて車道と区分している部分を「路側帯」といい、白線1本の場合は自転車も通行できますが、歩行者がいる場合には「歩行者の通行を妨げないような速度と方法で進行しなければならない」と定められていますので、これに違反した場合は路側帯での歩行者妨害となります。

⑹ 遮断踏切立入り(道路交通法第33条第2項)

道路交通法第33条第2項では「車両は踏み切りの遮断機が下りようとしている、または下りているとき、あるいは警報機がなっている時は踏み切りに入ってはならない」と定められていますので、これに違反した場合は遮断踏切立入りに該当する違反行為とされます。

⑺ 交差点での優先車妨害(道路交通法第36条)

道路交通法第36条では交通整理がされていない交差点(信号の無い交差点)を直進する時は左から来る車両の進行が優先されると定められていますので、これに違反した場合は原則として交差点での優先車妨害にあたります。

⑻ 交差点での右折時における優先車妨害(道路交通法第37条)

⑺と同様に、交通整理がされていない交差点を右折する場合には、道路交通法第34条第3項の定めにより軽車両は出来るだけ交差点の側端に沿って徐行して通行しなければなりませんので、右折して進行方向が変われば⑺と同じ様に左側から来る車両が優先となるので、これに違反した場合交差点での右折時における優先車妨害に該当することになります。

⑼ 環状交差点での安全進行義務違反(道路交通法第37条の2)

環状交差点とはフランスの凱旋門付近にある信号のないロータリー状のような交差点をいい、日本では東京都多摩市や長野県飯田市で出来た交差点のことを言いますが、ここを通行する場合のルールとして
進入する際は徐行することや、交差点を通行する際は他の車両の通行の邪魔をしたりしてはならないと定められており、これに違反した場合環状交差点での安全進行義務違反に該当することになります。

⑽ 指定場所一時不停止(道路交通法第43条)

一時停止の標識または道路標示のある場所では停止線の直前で一時停止をしなければならない、と定められていますのでこれに違反した場合を指します。

⑾ 歩道通行での歩行者妨害(道路交通法第63条の4第2項)

自転車が歩道を通行する場合、歩行者の通行を妨げてはならない、と定められており、ベルや声、音などで歩行者を立ち止まらせたり、どかしたりした場合、通行を妨げたことになりますので違反となることを指します。

⑿ ブレーキのない自転車運転(道路交通法第63条の9第1項)

道路交通法第63 条の9第1項では「自転車の運転者は、内閣府令で定める基準に適合する制動装置を備えていないため交通の危険を生じさせるおそれがある自転車を運転してはならない。」と定められており、内閣府令=道路交通法施行規則第9条の3で「前車輪と後車輪を制動する装置」と定められているので前後ともブレーキ装置が無いかどちらか片方だけのブレーキのみの自転車を運転してはならないことを指します。

⒀ 酒酔い運転(道路交通法第65条第1項、第117条の2第1号)

道路交通法第65条第1項では「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない。」と定められていて、第117条の2第1号では第65条に違反した場合は100万円以下の罰金か5年以下の懲役(一定期
間の使役を伴う拘束)に処せられるとされています。この酒酔い運転をすると、危険行為に該当するとされています。

⒁ 携帯電話を使用しながら事故を起こしたなどの安全運転義務違反(道路交通法第70条)

道路交通法第70条では「運転者の安全運転の義務」として「車両等の運転者は、当該車両等のハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作し、かつ、道路、交通及び当該車両等の状況に応じ、他人に危害を
及ぼさないような速度と方法で運転しなければならない。」と定められています。携帯電話の使用や傘差し運転は「ハンドル、ブレーキその他の装置を確実に操作」できないし、イヤホン・ヘッドホンの使用は周囲の音が遮断されてしまい「道路、交通及び当該車両等の状況に応じ」ることができず、脱げ易いサンダルや下駄は「その他の装置を確実に操作」できないので、違反行為となります。制限速度が示されていない道路での高速走行や、走行中の両手離し等の行為も、この条文の趣旨である「安全運転」を阻害する行為となり違反となることを指します。

 

3 道路交通法及び道路交通法施行規則の関連条文

⑴ 道路交通法第108条の2第1項第14号

ア 条文

公安委員会は、内閣府令で定めるところにより、次に掲げる講習を行うものとする。

十四 自転車の運転による交通の危険を防止するための講習

イ 解説

(ア)「内閣府令で定めるところにより」

これは道路交通法施行規則第38条を指します。

(イ)「講習を行うものとする」

これは公安委員会が行うことを原則とするという意味です。「行わなければならない」と規定している場合のように公安委員会に義務を課したものではありませんが、実質的には、公安委員会は、この規定により格別の事由のある場合を除き、原則として自転車運転者講習を実施すべきことになります。

⑵ 道路交通法施行規則第38条第14項

ア 条文

道路交通法108条の2第1項第14号に掲げる講習(以下「自転車運転者講習」という。)は、次に定めるところにより行うものとする。
一 運転者としての資質の向上に関すること、自転車の運転について必要な適性並びに道路交通の現状及び交通事故の実態その他の自転車の運転について必要な知識について行うこと。
二 あらかじめ講習計画を作成し、これに基づいて行い、かつ、その方法は、教本、視聴覚教材等必要な教材を用いて行うこと。
三 自転車の運転について必要な適性に関する調査に基づく個別的指導を含むものであること。
四 講習時間は、三時間とすること。

イ 解説

具体的な講習内容としては、自身の運転の問題点を気付かさせた上での個々人の特性に応じた個別的な指導、具体的な事故事例に基づく事故原因・回避方法等についてのディスカッション、自転車による交通違反により交通事故を起こした者の実際の科刑や損害賠償責任についての教示を等を行っています。

⑶ 道路交通法第108条の2第3項

ア 条文

公安委員会は、内閣府令で定める者に…第十四号…に掲げる講習…の実施を委託することができる。

イ 解説

これは、公安委員会が自転車運転者講習の実施を第三者に委託できる旨を定めたものです。

すなわち、自転車運転者講習は、行政処分というようなものではありませんので、公安委員会が十分な能力を持ち有する者に委託してこれを行わせることは、何ら差し支えないものと考えられています。そこで、本条において講習の委託の規定を設けるとともに、委託することのできる相手方の範囲を明確にする意味で、これを内閣府令に定める者に限定することとしています。

⑷ 道路交通法第108条の3の4

ア 条文

公安委員会は、自転車の運転に関しこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定又はこの法律の規定に基づく処分に違反する行為であつて道路における交通の危険を生じさせるおそれのあるものとして政令で定めるもの(次条において「危険行為」という。)を反復してした者が、更に自転車を運転することが道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認めるときは、内閣府令で定めるところにより、その者に対し、三月を超えない範囲内で期間を定めて、当該期間内に行われる第108条の2第1項第14号に掲げる講習(次条において「自転車運転者講習」という。)を受けるべき旨を命ずることができる。

(罰則 第120条第1項第17号)

イ 解説

恣意的な運用を排し、客観的な事実に基づいて判断することを可能にするため、将来的に道路における交通の危険を生じさせる行為をする可能性が高いといえる危険行為を反復した者に限定して受講命令の対象とすることにしています。

自転車運転者講習の受講を命じる場合には、行政手続法第13条第1項第2号の規定に基づき、対象者に対して弁明の機会を付与した上で、3か月を超えない範囲内で期間を定めて講習の受講を命じることになります。海外赴任等のやむを得ない事情で定められた期間内に受講できないと見込まれる場合は、当該事情を記載した弁明書を公安委員会に提出し、公安委員会において、受講命令を発する時期を調整するなどして十分な受講期間を確保するための措置を講ずることになります。

(ア)「公安委員会」

自転車運転者講習制度においては、直近の危険行為をした時点における、当該危険行為をした者の道路における交通の危険を生じさせるおそれの有無を判断した上で、自転車運転者講習の受講を命ずることとなるため、直近の危険行為をした地を管轄する公安委員会が命令主体となります。他方で、旅行先のレンタルサイクルを利用中に危険行為をした場合のように、直近の危険行為をした地と被命令者の住所地が異なる場合もあり得ることから、被命令者は、受講を命令した公安委員会とは異なる公安委員会が行う講習を受けることができるとされています。

(イ)「危険行為」

危険行為については、道路交通法施行令41条の3によって定められています。

危険行為の有無の認定については、危険行為で検挙したことをもって危険行為をしたと認定されています。このため、危険行為について指導警告をされたにすぎない場合は、命令の要件を充足しないことになり、また、検挙されることのない14歳未満の者も受講命令の対象とはなりません。

(ウ)危険行為を「反復していた者」

危険行為を反復していた者には、2回以上危険行為をした者が該当することになりますが、1度危険行為をして長期間経過した後に再度危険行為をした者については、「道路における交通の危険を生じさせるおそれがある」とは認められない場合もあると考えられるため、運用上、過去3年以内に2回以上危険行為をした者を受講命令の対象とすることとされています。

(エ)「更に自転車を運転することが道路における交通の危険を生じさせるおそれがあると認めるとき」

例えば、自転車事故によって脊髄を損傷して下半身不随となり、将来的に自転車を運転することができなくなった者など、自転車の運転によって道路における交通の危険を生じさせるおそれが失われ又は十分に低減したと認められる者については、自転車運転者講習の受講を命令する必要はないと考えられるため本要件が定められています。

裏を返せば、こうした特別の事情が認められない限り、受講命令の対象になります。

(オ)「3月を超えない範囲内で期間を定めて」

3か月の期間を定めているのは、被命令者が有する危険性を可能な限り速やかに改善する必要があることと、十分な受講機会を確保すべきであることとの均衡を図るためです。

⑸ 道路交通法施行令第41条の3

法108条の3の4の政令で定める行為は、自転車の運転に関し行われた次に掲げる行為とする。
一 法第7条(信号機の信号等に従う義務)の規定に違反する行為
二 法第8八条(通行の禁止等)第1項の規定に違反する行為
三 法第9条(歩行者用道路を通行する車両の義務)の規定に違反する行為
四 法第17条(通行区分)第一項、第四項又は第六項の規定に違反する行為
五 法第17条の2(軽車両の路側帯通行)第2項の規定に違反する行為
六 法第33条(踏切の通過)第2項の規定に違反する行為
七 法第36条(交差点における他の車両等との関係等)の規定に違反する行為
八 法第37条(交差点における他の車両等との関係等)の規定に違反する行為
九 法第37条の2(環状交差点における他の車両等との関係等)の規定に違反する行為
十 法第43条(指定場所における一時停止)の規定に違反する行為
十一 法第63条の4(普通自転車の歩道通行)第2項の規定に違反する行為
十二 法第63条の9(自転車の制動装置等)第1項の規定に違反する行為
十三 法第65条(酒気帯び運転等の禁止)第1項の規定に違反する行為(法第117条の2第1号に規定する酒に酔つた状態でするものに限る。)
十四 法第70条(安全運転の義務)の規定に違反する行為

⑹ 道路交通法第108条の3の5

ア 条文

公安委員会は、前条の規定による命令をしたとき又は自転車の運転者が危険行為をしたとき若しくは自転車運転者講習を受けたときは、内閣府令で定める事項を国家公安委員会に報告しなければならない。この場合において、国家公安委員会は、自転車運転者講習に関する事務の適正を図るため、当該報告に係る事項を各公安委員会に通報するものとする。

イ 解説

本条は、自転車の運転者が危険行為をしたとき等において、その者の住所、氏名等内閣府令で定める事項を国家公安委員会に報告し、報告を受けた国家公安委員会において、当該報告に係る事項を各公安委員会に通報することとしたものです。

「内閣府令で定める事項」については、道路交通法施行規則38条の4の5において規定されています。

国家公安委員会に報告することとされているのは、

① 危険行為を反復していた者が受講命令の対象となるところ、危険行為は必ずしも一つの公安委員会の管轄区域で行われるものではないため、他の公安委員会の管轄区域で行われた危険行為についても把握しておく必要があること

② 受講命令については、直近の危険行為をした地を管轄する公安委員会が命令するところ、命令を受けた者は当該公安委員会以外の公安委員会(例えば、同人の住所地を管轄する公安委員会)が行う自転車運転者講習を受講することも可能であるため、自転車運転者講習を行う公安委員会は、受講を申し出た者が真に受講を命じられているかを把握しておく必要があること

③ 受講を命じた公安委員会と自転車運転者講習を行った公安委員会が異なる場合、受講を命じた公安委員会は、受講命令に違反しているかを確認するため、自転車運転者講習受講の事実を把握しておく必要があること

などを踏まえ、これらの情報について共有を図ることにあります。

⑺ 道路交通法第120条1項17号

次の各号のいずれかに該当する者は、5万円以下の罰金に処する。
十七 第108条の3の4(自転車運転者講習の受講命令)の規定による公安委員会の命令に従わなかつた者

4 さいごに

当事務所では、自転車事故被害の事案を数多く扱っております。
自転車事故被害に遭われた方については無料の法律相談を実施しておりますので、まずはお問い合わせください。
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この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。