交通事故コラム

治療費

労災利用による治療のすすめ

2020.08.11

労災保険利用による治療のメリット

労災保険利用による治療のメリットは、一言でいうと、被害者に過失分がある場合に、経済的メリットが生じ得る点です。これは、労災保険の保険給付は、「費目間控除の制限」が生じることから起こるメリットです。

治療費200万円、慰謝料100万円、被害者の過失20%の例で、具体的にみてみましょう。

(1)治療費を支払ったのが相手方保険会社である場合(費目間控除の制限がない場合)

治療費 200万円

慰謝料 100万円

小計  300万円

過失相殺 -60万円(300万円×20%)

既払い  -200万円

請求額 40万円 となります。相手方保険会社は、200万円治療費を払っているところ、本来であれば被害者過失分40万円(200万円の20%)は支払わなくていいはずだった金額なので、これが控除されます。

支払い過ぎた40万円は、相手方に請求できる慰謝料80万円(100万円から20%過失相殺された80万円)から、(費目を超えて)控除されるという仕組みです。

(2)治療費を支払ったのが労災保険である場合(費目間控除の制限がない場合)

治療費 200万円

慰謝料 100万円

過失相殺 -60万円(300万円×20%)

既払い  -160万円

請求額 80万円 となります。既払いのところをみてください。労災保険からは200万円が支払われていますが、労災保険は、「費目間控除の制限」という仕組みがあり、治療費(療養給付)として支払われた金員は、過失相殺後の治療費の額(例でいえば200万円×20%=160万円)を限度として(費目を超えずに)、既払額として扱うという理屈です。残りの40万円は、他の費目(慰謝料)からは、控除されません。

つまり、労災保険を使うと、被害者に過失がある場合、過失の一部を労災保険がかぶってくれるというメリットがあるのです。

以上は、治療費(労災では療養の給付といいます。)の点でのメリットですが、労災保険を使用するメリットとしては、休業補償の点で、損益相殺されない特別支給金(給付基礎日額の2割)が請求できるというメリットもあります。

この記事の執筆者

小杉 晴洋
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災などの損害賠償請求解決件数1000件超。

経歴
小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身・福岡市在住。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(当時。現「神奈川県弁護士会」)に登録後(損害賠償研究会所属)、福岡県弁護士会に登録換え(交通事故委員会所属)。