骨折
鼻の骨折
2020.08.11
鼻骨骨折
(1)概要
鼻骨周辺に強い外力が加わった場合に生じます。鼻骨は薄く、折れやすい骨です。
(2)症状
骨折部位の疼痛(痛み)、腫脹(腫れ)、変形、嗅覚脱失、鼻呼吸困難
(3)認定されうる後遺障害等級(疼痛等感覚障害以外)
後遺障害等級第12級相当 | 嗅覚脱失または鼻呼吸困難 |
後遺障害等級第14級相当 | 嗅覚の減退 |
(4)必要な検査など
ア レントゲン・CT
鼻骨骨折は、まずはレントゲンで確認します。しかし、レントゲンでは、骨折は判断できても、鼻骨骨折の転位の程度や骨片の有無などが判断困難となる場合もあります。また、鼻骨が骨折するということは、頭蓋内に外傷が及んでいる可能性があるため、その他の部位の骨折の有無を調べるためにも、CT検査は行うべきと考えます。
イ 嗅覚検査
嗅覚脱失及び嗅覚の減退については、T&Tオルファクトメータによる基準嗅覚検査の認知域値の平均嗅力損失値の程度によって後遺障害等級が認定されるとされています。なお、嗅覚脱失については、アリナミン静脈注射(アリナミンFを除く)による静脈性嗅覚検査のみによって確認しても差支えないとされています。
(5)注意点
① 嗅覚障害の原因を特定する。
嗅覚障害は、大別すると気導性嗅覚障害、臭神経性嗅覚障害、中枢性嗅覚障害に分類されます。
気導性の嗅覚障害は、副鼻腔炎やポリープによって、においの分子が臭細胞に到達できないために、匂いが感じられなくなるという状態を指します。鼻骨骨折後ににおい分子の通り道が塞がれてもこの障害が起こりますが、現在では鼻骨骨折後の整復術は一定の効果をみているため、鼻骨骨折後に気導性の嗅覚障害が起こるというのは想定しずらい事態です。
外傷性の嗅覚障害のうち、中枢系のものを除くと、嗅神経性嗅覚障害が最も多いものと考えられ舞る。これは、骨折や脳震盪などの頭部外傷によって嗅神経が切れてしまった場合に生じる障害です。嗅神経まで外傷が達するので、鼻骨の単独骨折の場合には、この障害が起こることは稀で、むしろ頭部外傷や頭蓋骨骨折、眼窩底骨折などの骨折を併発するケールが多いです。
中枢性嗅覚障害は、脳挫傷といった頭部外傷や、脳出血、脳梗塞、脳腫瘍、アルツハイマー病などの脳神経に変化が起こる病気が原因とされるものです。交通事故に関連して言えば、脳挫傷といった能実質の損傷に併発することが多く、その場合には高次脳機能障害も疑われます。
いずれにしても、嗅覚障害が行った場合には、気導性のものか、嗅神経障害のものか、中枢系のものかを鑑別する必要があります。これによって検査も変動し得ます。
② 症状固定時ないしは症状固定に近い時期にCTの撮影をお願いする。
一般に、鼻骨骨折は、レントゲンで経過を追います。そして、骨が癒合すれば、「治癒」と表現されることが多い病態です。そのため、不正癒合や変形の有無の確認が不十分となることがあります。
そこで、症状固定を迎える際、骨折部の痛みが続いていたり、嗅覚異常が続いている場合には、CT撮影を検討してもらってください。
③ 嗅覚障害がある場合はそのメカニズムを記載してもらう。
①に挙げたとおり、嗅覚障害は大きく3つに分類されます。そのため、外傷後どういうメカニズムによって嗅覚障害が生じたのか、診断書等に記載してもらう必要があります。嗅覚異常がある場合には、嗅覚脱失や嗅覚減退の検査をしてもらわないといけないので、その際にどういうメカニズムで嗅覚障害が生じているのか、主治医の先生に聞いてみられるのが良いと思います。