骨折
目の骨折
2020.08.11
眼窩底骨折
(1)概要
眼球を覆うくぼみを眼窩といい、眼窩下部の眼窩底が骨折した状態です。
(2)症状
骨折部位の疼痛(痛み)、腫脹(腫れ)、眼球陥没、複視(ものが二重に見える)
(3)認定されうる後遺障害等級
後遺障害等級第10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
後遺障害等級第13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
(4)必要な検査など
ア レントゲン・CT
眼科底骨折の場合には、CTを撮影されることが多いです。CTでは、眼窩底骨折後の転位の有無と、軟部組織の落ち込みがあるかを確認します。眼窩底骨折のCTでは、鼻の横の空洞部分に灰色に見える軟部組織の落ち込みが認められます。
イ 身体所見の確認
検査ではないですが、眼科底骨折の場合には、血液と体液が鼻の横の空洞部分に蓄積するために、腫脹が認められます。この主張の有無は、必ず確認してください。また、多くの場合、青色または紫色にみえる腫れ(眼の周りの痣)が認められます。これが外傷性の所見ともなりますので、痣の写真を撮影しておくことをお勧めします。
ウ ヘススクリーンテスト
眼窩底骨折後、ものが二重に見えるなどの症状が持続する場合には、複視と呼ばれる症状が生じている可能性があります。この複視の症状は、ヘススクリーンテストと呼ばれる検査でその程度を確認します。
エ 調節機能検査
眼窩底骨折後、今まで見えていた距離でものがぼやけたりする場合があります。その場合には、調節機能障害を疑います。調節機能障害が疑われる場合には、アコモドポリレコーダーで計測することとされているのが一般ですが、より客観的な検査として、アコモドメータなどの検査機器を用いる場合もあります。特に被害者の年齢が45歳以上の場合には、老視の関与なのか、外傷性の調節機能障害の関与なのかが判別困難となるケースが少なくありません。老視の関与が疑われる場合には、可能な限り客観的な検査で調節機能障害を検査したほうが良いと思われます。
オ 視力検査
視力低下が認められる場合、万国式試視力表で視力検査をしてもらってください。
カ ゴールドマン型視野計による視野測定
今まで見えていた視野の一部が暗転していたり、視野が狭まった場合には、視野測定を行ってもらってください。
(5)注意点
① 症状固定時に、CT画像で軟部組織の落ち込みを確認する。
症状固定時には、不正癒合、変形癒合の有無とともに、軟部組織の落ち込みがないかを確認する必要があります。不正癒合や変形癒合、軟部組織の落ち込みの落ち込みが症状固定時に確認できない場合には、症状が残存していたとしても、それを他覚的に証明する検査所見がないとして、後遺障害等級が否定される可能性があります。
② 複視、視野障害、調節機能障害、視力低下の有無を確認する。
眼窩底骨折後に生じる障害は、実に多彩です。多くは治癒したり、残存したとしても骨折部の痛みなどだけで済むケースも多いですが、場合によってはその他の障害が残存することもあります。重複しますが、以下のとおり、その症状を確認してください。(4)のとおり、症状によって、行うべき検査も変わってきますので、症状固定前に症状を確認してから、症状固定時に主治医の先生にお願いする検査を選別することが重要です。
・複視:ものが二重に見えるかの確認
・視野障害:いままで見えていた部分が暗転(黒くなって見えなくなる)しているかの確認
・調節機能障害:今まで見えていた距離でものがぼやけるようになる。
・視力障害:視力が低下する。
③ 後遺障害診断書の記載部分に注意する。
眼窩底骨折後の症状については、その症状のよって後遺障害診断書の①または③に記載していただく必要があります。主治医の先生が後遺障害診断書の記載に慣れている場合は良いのですが、眼の後遺障害は事案として多いものではないので、書きなれていない先生も多くおられます。そのため、主治医の先生が後遺障害診断書を記載しやすいように、被害者側でもどの検査を、後遺障害診断書のどの部分に記載していただく必要があるか、今一度確認しておきましょう。