骨折
顔の骨折
2020.08.11
①頬骨体部骨折
(1)概要
頬骨を形成する体部(前方に突出した部分)が骨折した状態です。
(2)症状
・骨折部位の疼痛(痛み)、腫脹(腫れ)、眼科表面の内出血
・眼球陥没による複視(ものが二重に見える)
・眼窩下神経の損傷による頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉の感覚障害(しびれ)
・頬部の平坦化
(3)認定されうる後遺障害等級
後遺障害等級第10級2号 | 正面を見た場合に複視の症状を残すもの |
後遺障害等級第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
後遺障害等級第13級2号 | 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの |
後遺障害等級第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
(4)必要な検査など
ア レントゲン・CT
頬骨体部骨折の場合には、レントゲンで経過を確認することが多くあります。しかし、頬骨体部は顔面部の感覚を司る神経が走行しており、その神経が傷つくかどうかは骨折の状態や転位の有無などに左右されることがあるため、CT撮影を依頼されることをお勧めします。CTでは、骨折箇所の不正癒合、変形癒合の有無と、感覚障害が残っている場合にはその原因となる骨折の転位の有無などを確認します。
イ 身体所見の確認
頬骨体部骨折の場合、どのような身体症状が生じているかは、必要な検査を判断する上で、非常に重要です。以下は症状の大別に過ぎませんが、一応の参考にしてください。
・眼球症状
眼球が収まっている部分(囲い)を眼窩といいますが、頬骨の骨折によって、眼窩が広がり、眼球が陥没することがあります。これに伴って眼球の動きが悪くなり、ものが二重に見える「複視」という症状が生じます。
・頬部感覚障害
上顎骨部分には、眼窩下神経という神経が走行しており、これが頬骨との接合部に近いので、体部骨折の程度によってはこの神経が傷つく場合があります。眼窩下神経が傷ついた場合、頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉に及ぶことがあります。
・顔面変型
骨折後に頬部のへこみが生じることがあります。
ウ ヘススクリーンテスト
イの眼球症状に記載していますが、頬骨体部骨折の場合、ものが二重に見える複視という症状が生じることがあります。複視は、ヘススクリーンテストという検査によってその有無と症状が確認されます。
(5)注意点
① 受傷直後のCT画像にて骨折転位の有無を確認する。
頬骨体部骨折の場合には、眼窩下神経という感覚神経の損傷が考えられます。感覚障害がない場合には確認の必要はないですが、感覚障害が生じている場合には、受傷直後のCT画像にて神経損傷が起こり得る程度に骨折の転位が行っているかの確認が必要です。
② 症状固定時に、CT画像で不正癒合、変形癒合を確認する。
症状固定時には、不正癒合、変形癒合の有無を確認する必要があります。特に、被害者が骨折部の痛みを訴えている場合には、癒合状態の確認は必須です。
③ 複視の有無を確認する。
頬骨体部骨折の場合には、痛みも強いことから、「ものが二重にぼやける」状態は、自覚しづらいことがあります。
①頬骨弓部骨折
(1)概要
頬骨を形成する弓部(側方に突出した部分)が骨折した状態です。
(2)症状
・骨折部位の疼痛、腫脹、眼科表面の内出血、顔側面のへこみ
・鼻の下の側頭筋の損傷による開口障害(口が開けづらくなる)
(3)認定されうる後遺障害等級
後遺障害等級第12級13号 | 局部に頑固な神経症状を残すもの |
後遺障害等級第14級9号 | 局部に神経症状を残すもの |
(4)必要な検査など
ア レントゲン・CT
頬骨弓部骨折の場合にも、レントゲンで経過を確認することが多いです。痛みが残っている場合には、症状固定時に癒合状態を確認するため、CT撮影をされていたほうがよいでしょう。
イ 顔面変型の確認
顔面変型の確認は、腫脹(腫れ)が引いてからでないと確認できないことが多くあります。骨折後に頬部のへこみが生じるという形で表れます。
(5)注意点
① 弓部骨折では、眼の症状や感覚障害は起こらない。
弓部は、眼窩が傷害されたわけでも、神経が走行する部分が走行されたわけでもないので、眼の症状や感覚障害は、起こりません。弓部骨折という診断がついているだけなのに、顔面の感覚障害が発現している場合には、弓部以外の部分の受傷(眼窩部や中枢系)を確認されたほうが良いと思われます。
② 症状固定時に、CT画像で不正癒合、変形癒合を確認する。
症状固定時には、不正癒合、変形癒合の有無を確認する必要があります。特に、被害者が骨折部の痛みを訴えている場合には、癒合状態の確認は必須です。
③ 複視の有無を確認する。
頬骨弓部骨折の場合には、痛みも強いことから、「ものが二重にぼやける」状態は、自覚しづらいことがあります。