交通事故コラム

後遺障害

後遺障害診断書について弁護士に相談した方が良い4つの理由とは?

2022.10.13

後遺障害診断書 慰謝料 書き方 症状固定 逸失利益

診察・後遺障害診断

このページは後遺症被害者専門弁護士による、後遺障害診断書の重要性及び記入時のポイントと、後遺障害診断書について弁護士に相談した方が良い4つの理由についての解説のページになります。

 

後遺障害診断書は、後遺障害等級の認定においては極めて重要な証拠になります。

なぜなら、後遺障害等級の認定をしてくれる自賠責損害調査事務所内における審査は、原則書面による審査だからです。醜状障害などの一部の例外を除き、実際に調査員が直接被害者の方の身体の状態を確認したりすることはありません。

自賠責損害調査事務所に提出する書類は、交通事故証明書・診断書・診療報酬明細書など様々な書類がありますが、後遺障害について直接言及できる書類は後遺障害診断書だけです。

自賠責損害調査事務所は原則書面による審査しか行わず、かつ後遺障害について直接言及できる書類は後遺障害診断書だけ。

いかに後遺障害診断書が、後遺障害等級の認定において重大な意味を持つかがお分かりになるかと思います。

 

後遺障害診断書の作成権限は、交通事故の被害者の治療・診察をしてくださった医師にしかありません。それは、医師が医学のプロであり、被害者の怪我や症状について最も詳しく知っているのが医師だからです。

ですが、適切な後遺障害等級が認定される後遺障害診断書の記載について最も詳しいのは、医師ではなく専門の弁護士です。

それは、経験値の高い弁護士が後遺障害等級申請のプロであり、自賠責損害調査事務所内部の後遺障害等級認定の判断基準やそれに必要な記載について、最も詳しく知っているのが専門の弁護士だからです。

実際には被害者の方の身体に後遺症が残存しているにもかかわらず、適切な後遺障害等級が認定されないということは、絶対に避けなければなりません。

もちろん嘘の記載をしてもらうわけにはいきませんが、同じ症状に関する記載でも、その記載の方法により後遺障害等級が認定される確率が変化することもあります。

 

このページでは、後遺症被害者専門弁護士が、後遺障害診断書の重要性及び記入時のポイントと、小杉法律事務所の取り組みについて解説します。

ただ、このページの記載はあくまで一般的な話に過ぎません。交通事故被害者の方が訴える症状は千差万別であり、それらの症状ごとに最も適切な後遺障害診断書の書き方が存在します。

小杉法律事務所の無料相談では、被害者の方が訴える症状ごとに認定される可能性がある後遺障害等級と、その後遺障害等級が認定されるポイントについて、後遺症被害者専門弁護士がお一人お一人に最も適切な回答を差し上げます。ご相談は無料になりますのでお気軽にお問い合わせください。

後遺症被害者専門弁護士への無料相談はこちらのページから。(お電話・LINE・メールでのお問い合わせ可)

 

そもそも後遺障害診断書とは?

後遺障害診断書

そもそも後遺障害診断書とは、後遺障害等級の認定を申請する際に自賠責損害調査事務所に提出する書類のことです。

傷病に対して行われる医学上一般に承認された治療方法をもってしても、その効果が期待し得ない状態で、かつ、残存する症状が、自然的経過によって到達すると認められる最終の状態」を症状固定といいます。(『労災補償障害認定必携』(一般財団法人労災サポートセンター発行)より引用))

交通事故による被害で、怪我を負った場合、基本的には交通事故に遭ってすぐが最も症状がひどく、治療やリハビリを懸命に続けていく中でだんだんと症状が緩和していきます。

しかし、治療やリハビリを続けていく中で、治療やリハビリを続けていてもなかなか効果が出なくなるタイミングがやってきます。

そのタイミングを、症状固定といい、ここで後遺障害診断をするわけです。

症状固定が持つ意味① 後遺障害等級申請ができるようになる

先程の『労災補償障害認定必携』における後遺障害・後遺症の定義は「負傷がなおったときに残存する当該負傷と相当因果関係を有し、かつ、将来においても回復が困難と見込まれる精神的又は身体的なき損状態」とされています。

ここでいう「なおったとき」というのが、症状固定というわけです。

治療・リハビリを続けていく中で症状がだんだんと緩和しているうちは、どの症状が将来においても回復が困難と見込まれるかの予想ができませんよね?

その状況では後遺障害の内容の決定もできません。

言い換えれば、症状固定は後遺障害の内容を決定し、後遺障害等級申請をするための一つの区切りということができます。

しかし、原則として症状固定=治療・リハビリの効果がなくなったと認めるということになりますから、この症状固定の日も医師が決定する事項です。弁護士がこの日を症状固定としてほしい、ということはできません。

ただし、医師によっては様々な理由で症状固定と認めてくれない医師もいます。

そのような場合には、症状固定はあくまで後遺障害等級の申請の手続上で必要な契機に過ぎず、医師の治療に疑義を申すものではないなどといった説明をして症状固定を認めてくださるように尽力しています。

『労災補償障害認定必携』においても、症状固定に至るまでにかなりの期間を要すると見込まれる場合には6か月を一つの目安として、将来固定すると認められる症状によって等級を認定することとする。との記載があります。

 

症状固定が持つ意味② 請求できる損害費目の名前が変わる

上で見たように、症状固定は治療の終了を意味します。

したがって、症状固定日の以前と以後で損害の性質が変わります。

基本的には、症状固定日以前は現に生じた損害について、症状固定日以後は将来にわたって生じるであろう損害についての話をしているようなイメージです。

治療費を例に挙げると、症状固定以後の治療費は「症状固定後の治療費」「将来治療費」といった損害になります。(「症状固定後の治療費」と「将来治療費」の境目は、口頭弁論終結時とされていますが、実務上は示談提示時or訴訟提起時とされる運用が多いです。)

当然ですが症状固定は治療の終了を意味するわけですから、基本的には「症状固定後の治療費」や「将来治療費」は認められません。

交通事故の処理の実務において圧倒的な権威を誇る『民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準 上巻(基準編)』(日弁連交通事故相談センター東京支部著)では、「症状固定後の治療費」や「将来治療費」は「一般に否定的に解される場合が多いであろうが、その支出が相当な時は認められよう。」とされています。

症状が重く、治療を継続しないと症状が悪化するような場合に認められやすい傾向にあります。

これだけ聞くと治療費の方が認定されやすいのであれば症状固定はできるだけ遅らせた方が良いように思われますが、先程も申し上げたように症状固定は医師が決定する事項ですし、症状固定を迎えなければ事案も前に進みません。

また、加害者側保険会社は治療費対応を出来るだけ短くしたいと考えていますから、いつまででも治療費対応をしてくれるというわけではありません。

治療の効果があるうちは続けるべきですし、治療の効果があるのに加害者側保険会社が治療費の打ち切りを主張してきたときは反論すべきですが、医師が症状固定であると認めてくれるタイミングでは後遺障害診断をしてもらった方がトータルではプラスになります。

また、交通事故による被害で本来得られていたはずの収入などに関する損害をまとめて消極損害といいますが、この消極損害も、症状固定以前と以後で性質が変わります。

症状固定以前の消極損害を休業損害といいます。性質としては、入通院のためにお仕事を休んだり、有給休暇を使用したりして生じる損害といえるでしょう。

この休業損害は原則、現に生じた損害の限度で認められます。

一方で症状固定以後の消極損害を逸失利益といいます。性質としては、後遺症が残存したことにより将来にわたって本来稼げるはずだったお金が稼げなくなったことにより生じる損害といえます。

この逸失利益は、当たり前ですが将来にわたっての話ですから、想像で額を決定するしかありません。

その想像を少しでも現実的にするために、逸失利益の算出においては、基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間(に対応するライプニッツ係数)という式が用いられます。

個々の事情により大きく左右される部分ではありますが、基本的には基礎収入は交通事故前年の収入、労働能力喪失率は認定された後遺障害等級に対応する率、労働能力喪失期間は症状固定時の年齢から67歳までの期間とされています。

 

その他、症状固定以前と以後でその性質が変わる損害は以下の表のようなものがあります。

 

後遺障害等級が認定されると何が変わる?

後遺症逸失利益の金額が変わる

先程逸失利益の説明で、「労働能力喪失率は認定された後遺障害等級に対応する率」という文言が出てきました。

労働能力喪失率が認定された後遺障害等級によって変わるわけですから、当然労働能力喪失率を算出の式に含む逸失利益も変わります。

後遺障害等級は第1級から第14級まであり、それぞれの等級について労働能力喪失率が目安的に定められています。

第1級の場合は労働能力喪失率は100%(=働く能力をすべて失った)、第14級の場合は労働能力喪失率は5%とされています。

交通事故による被害で最も多い傷病名は、頚椎捻挫及び腰椎捻挫の、いわゆるむち打ちだと言われていますが、むち打ちによる痛みについて認定される後遺障害等級には、第12級13号と、第14級9号があります。

  • 第12級13号「局部に頑固な神経症状を残すもの」 労働能力喪失率14%
  • 第14級9号「局部に神経症状を残すもの」 労働能力喪失率5%
  • 非該当の場合 労働能力喪失率0%

後遺障害等級が変わるとどれくらい額に影響するかを考えるために、例として、事故前年の年収が500万円だった30歳の交通事故の被害者を挙げてみましょう。

労働能力喪失期間は67歳までの期間ですから、67歳-30歳=37年間です。中間利息控除を考慮したこの37年に対応するライプニッツ係数は22.1672となります。

したがってこの被害者の方の逸失利益は、500万円×労働能力喪失率×22.1672で算出されることになります。

 

1.後遺障害等級第12級13号に該当する後遺障害が残存した場合(=労働能力喪失率が14%の場合)

逸失利益は500万円×14%×22.1672=1551万7040円です。

2.後遺障害等級第14級9号に該当する後遺障害が残存した場合(=労働能力喪失率が5%の場合)

逸失利益は500万円×5%×22.1672=554万1800円です。

第12級13号と、第14級9号の違いは、画像等の客観的に痛みの原因が証明される所見があるかどうかの違いです。

その画像があるかどうかで、この被害者の方の場合、逸失利益だけで1000万円近くの差が生じてしまうことになります。

なお、第14級9号では、67歳までの労働能力喪失期間が認められないことの方が多く、実際にはもっと大きな差が生じることになります。

 

さらに、逸失利益は後遺症が残存したことにより将来にわたって本来稼げるはずだったお金が稼げなくなったことにより生じる損害ですから、後遺障害等級が認定されなければそもそも請求できません。

後遺障害非該当の判断をされた場合、逸失利益は0円です。

このように、後遺障害等級は逸失利益に大きな影響を与えます。

 

慰謝料の金額が変わる

後遺障害等級によって変わるのは逸失利益だけではありません。

慰謝料額も、後遺障害等級によって変わります。

慰謝料は大きく分けて、入通院の苦痛に対する慰謝料と、後遺症が残ってしまった苦痛に対する後遺症慰謝料の2つがあります。(そのほか、死亡事故の場合の死亡慰謝料や、近親者の精神的苦痛である近親者慰謝料もあります。)

入通院慰謝料は傷害慰謝料とも言われますが、入通院の日数や期間を基礎としつつ、ギプス固定等の安静を要する自宅療養期間の有無や、生死が危ぶまれる状態が継続したか、手術を繰り返したかなどを考慮しつつ決定されます。

入通院慰謝料・傷害慰謝料の詳細については弁護士向け講演内容を紹介したページがありますので、こちらをご覧ください。

 

後遺症慰謝料もそういった個々の事情はもちろん考慮されますが、認定される後遺障害の等級ごとに一定の基準があります。

先程の例でいうと、後遺障害等級第12級の場合の後遺症慰謝料は290万円、後遺障害等級第14級の場合の後遺症慰謝料は110万円とされていますから、180万円の差があります。

また後遺症慰謝料も逸失利益と同様、基本的に後遺障害等級が認定されなければ認められませんから、後遺障害非該当の判断が下された場合には後遺症慰謝料は0円です。

このように、後遺障害等級は慰謝料額においても大きな影響力を持っています。

 

後遺障害診断書が大切な理由

ここまで見てきたように、後遺障害等級は各損害費目について大きな影響力を持っており、認められる後遺障害等級によって最終的に受け取ることができる損害賠償金額は大きく変わります。

そして、後遺障害等級の認定に最も大きな影響を与えると言っても過言ではないのが、後遺障害診断書です。

冒頭でも述べたとおり、醜状障害など一部の場合を除いて、自賠責損害調査事務所は書面(及び提出の画像)で後遺障害等級認定の全ての過程を行い、等級認定の判断を下します。

ですので、後遺障害診断書にどういった記載がされるか、適切な記載をしてもらえるかは後遺障害等級の認定、ひいては最終的に受け取ることができる損害賠償額までに関わる重要な要素です。

後遺障害診断書が大切な理由がご理解いただけましたでしょうか?

後遺障害診断書が大切な理由が分かったところで、では実際に作成時にどういった点に注意しなければならないのかを以下で見ていきましょう。

 

小杉法律事務所には、後遺障害診断書が大切な理由、後遺障害診断書作成時の注意点を熟知した、後遺症被害者専門弁護士が在籍しております。

後遺障害診断書の内容・記載や後遺障害等級の認定などに疑問や不安をお抱えの方はぜひ一度お気軽に小杉法律事務所の後遺症被害者専門弁護士の相談をお受けください。

ご相談は無料です。後遺症被害者専門弁護士への無料相談はこちらのページから。

 

後遺障害診断書作成時の注意点

診察・後遺障害診断

①傷病名欄には入通院期間中に診断されたすべての診断名を記載してもらう

後遺障害診断書の傷病名(≒診断名)欄には、入通院期間中に診断されたすべての診断名を記載してもらいましょう。

傷病は身体に表れる症状の、最も根本的な原因です。

医師が診断名を記載してくれるということは、それだけで一つの医学的な証拠になります。

後遺障害診断書の作成をお願いしている病院以外の病院で診断された診断名についても記載してもらえることがありますので、後遺障害診断書作成時には交通事故発生から症状固定時までに通院したすべての病院の診断書の記載に目を通しておくことが重要です。

なお、「頚椎捻挫」と「頚部捻挫」のように、同じことを言っているような診断名については、1つの診断名を記載してもらえれば足ります。

 

ここで一つ注意点として、「被害者が自分の見解として後遺障害診断書に診断名の記入を要求してはいけません。」

傷病名欄への記載は医師の専権事項です。

被害者が自分の見解として診断名の記載をお願いすることは、医師に対して医学的な見解を述べるということになります。

これは医師との信頼関係を破壊してしまうことに繋がりかねません。

後遺障害診断書に適切な記載をしてもらうことができなくなったり、医学的な意見書を作成してもらうことができなくなったりすると、医学的な証明という、後遺障害等級の認定だけでなく、交通事故による損害賠償請求全体で最も大きな効力を持つといってよい証拠を得ることができなくなるというリスクが生じます。

傷病名の記載をお願いするのは他の病院で診断された診断名に限り、自身の見解を述べるのは次の「自覚症状欄」で行いましょう。

 

ここまで傷病名欄の記載についてみてきましたが、診断名の記載があることは、交通事故によって負った怪我と、被害者の身体に生じた症状との間に因果関係があるという最低限の証明です。

後遺障害等級の判断はあくまで「症状固定時に残存する後遺症」で行われますから、傷病名欄に的確な記載がされていれば則ち後遺障害等級が認定されるというわけではありません。

この「症状固定時に残存する後遺症」について記載するのが自覚症状欄です。

自覚症状欄は、被害者が自分の症状を堂々と主張できる場所というだけでなく、後遺障害等級認定の手続において、ある意味最も重要な場所といえるかもしれません。

ただし、被害者が自分の症状を主張する場所であるがゆえに、その主張の方法によって後遺障害等級が認定される可能性にも大きく影響を与えてしまいます。

以下で自覚症状欄の記載時の注意点をみていきましょう。

 

②自覚症状は漏れなく!正直に!正確に!言い過ぎない!

自賠責保険損害調査事務所は日々大量の交通事故の事案を処理しています。

そのため、その交通事故被害者の方の事故態様・治療経過などをじっくりと見たうえで、その被害者に当てはまり得る後遺障害等級について一から丁寧に検討することは現実的ではありません。

自賠責保険損害調査事務所がどうやってその被害者に当てはまる後遺障害等級に目星を付けているかというと、後遺障害診断書の自覚症状欄の記載を見て目星を付けています。

「自覚症状を把握し、その自覚症状を医学的に裏付ける証拠が提出されているか」という判断過程をたどるわけです。

ということは、後遺障害診断書の自覚症状欄に記載がなければ、そもそもその症状に後遺障害等級が認定されるかという検討に立ち入ってくれることすらないというわけです。

したがって自覚症状欄に何を書いてもらうかはその先の検討の入り口を確保するために、極めて重要になります。

 

さらに、自覚症状欄は被害者本人が直接自身の症状を後遺障害診断書に記載してもらうことができる唯一の場所です。

もちろん嘘はいけませんが、自覚している症状を正直に、正確に医師に伝えて記載してもらうことが重要です。

一方で、記載の仕方次第で後遺障害等級が認定される可能性が変わることもあるので注意が必要です。

後遺症に悩まされている被害者の方というのは、「フライパンを持つのも痛くてできず家事ができなくなった」「腰が痛むので重いものを持てなくなり仕事で困っている」など、自分が直面している後遺症の内容を詳細に伝えようとします。

これ自体は正しいことだと思いますが、こと後遺障害診断の場面においては、「フライパンを持っていない時は痛くないのね」「重いものを持たなければ腰痛はないのね」などの揚げ足とりがされてしまいます。

他方、自覚症状の言わな過ぎると、そもそも後遺障害等級の審査すらしてくれないといった事態に陥ります。

上で挙げたような例でいえば、「右腕痛あり」といった記載や、「腰痛あり。特に重いものを持つときひどくなる。」といった自覚症状を伝えるべきといえます。

どのような記載をしてもらうことが後遺障害等級が認定される可能性を上げるかなどは、後遺障害等級認定の仕組みを熟知している弁護士でなければ知りません。ですので、適切な後遺障害診断書の作成・適切な後遺障害認定には後遺症被害者専門弁護士に依頼することがおすすめというわけです。

 

③当てはまり得る後遺障害等級の認定に必要な検査はすべて行ってもらう

自覚症状欄を見て、被害者の自覚症状を把握した自賠責保険損害調査事務所の調査員は、次に後遺障害診断書の左下部~右の欄(「各部位の後遺障害の内容」)から、被害者に残存する後遺障害の程度を把握します。

「各部位の後遺障害の内容」は以下のような記載欄があります。

  1. 精神・神経の障害 他覚症状および検査結果
  2. 胸腹部臓器・生殖器・泌尿器の障害
  3. 眼球・眼瞼の障害
  4. 聴力と耳介の障害
  5. 鼻の障害
  6. そしゃく・言語の障害
  7. 醜状障害
  8. 脊柱の障害
  9. 体幹骨の変形
  10. 上肢・下肢および手指・足指の障害

適切な後遺障害等級の認定のためには、当てはまり得る等級の認定基準を熟知した上で、その認定に必要な検査は全て行ってもらわなければなりません。

ここでは具体例として、交通事故により右足の複雑骨折の怪我を負ってしまった被害者の方を紹介します。この方の事案の詳細は、医師に後遺障害診断書の修正を依頼し、後遺障害等級6級を獲得した事案としてご紹介しておりますので、興味がある方はご覧ください。

この方の傷病名欄には「右脛腓骨開放骨折、右腓骨骨幹部骨折術後偽関節、右総腓骨神経障害及び右第3,4中足骨骨折」と記載され、

自覚症状欄には「右足関節痛、右膝痛、右足趾痛」と記載されました。

これだけみると、傷病名も自覚症状も右足についての話をしているので、医師に「10.上肢・下肢および手指・足指の障害の欄に記載をしてください。」とお願いをすれば足りるように思われますが、実際にはそうではありません。

後遺障害等級認定の基準を満たすための検査を明示して行ってもらわなければ不十分な後遺障害診断書になってしまう可能性があります。

何度も述べているように、後遺障害診断書の作成権限を持つのは医師だけであり、被害者の怪我や症状について最も詳しく知っているのも医師です。

ですが、適切な後遺障害等級の認定を受けるために必要な検査項目について最も詳しく知っているのは弁護士ですので、必要な検査項目を明示し、検査を依頼する必要があります。

 

まず、右腓骨骨幹部骨折術後偽関節という傷病についてですが、偽関節とは文字のとおり偽の関節ができることです。

この方の骨折は程度が酷かったため、正常な骨癒合が起こる前に骨折箇所が硬化や萎縮をしてしまい、本来曲がるはずのない場所が曲がるようになってしまった(関節化してしまった)のです。

この右腓骨の偽関節は、下肢の変形障害として評価され、次の3つの等級が認定される可能性があります。

  • 第7級10号 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
  • 第8級9号 一下肢に偽関節を残すもの
  • 第12級8号 長管骨に変形を残すもの

「著しい運動障害を残すもの」かどうかの区別は、常に硬性補装具を必要とするかしないかで行われます。

したがって、この右腓骨骨幹部骨折術後偽関節については、「10.上肢・下肢および手指・足指の障害の欄の長管骨の変形について、右腓骨に偽関節を残していることを記載していただいた上で、常に硬性補装具を必要とする場合にはその旨ご記載ください。」といったお願いをする必要があります。

 

また、この方には右足に可動域の制限(機能障害)が残っていましたので、これについても後遺障害診断書に記載してもらう必要があります。

下肢の機能障害が認定される可能性があるのは次の6つの等級です。

  • 第1級6号 両下肢の用を全廃したもの
  • 第5級7号 1下肢の用を全廃したもの
  • 第6級7号 1下肢の3大関節中の2関節の用を廃したもの
  • 第8級7号 1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
  • 第10級11号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
  • 第12級7号 1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

下肢の機能障害は、基本的に健側(怪我をしていない側)と、患側(怪我をしている側)との比較により後遺障害等級の認定がされます。

足関節については、屈曲運動と伸展運動で測定した可動域を健側と患側とで比較して認定します。

さらに、各運動について自動(自分で動かす)運動と、他動(医師が動かす)運動について計測が必要です。

関節可動域の測定においては原則として他動運動による測定値を採用するとされています。(日本整形外科学会及び日本リハビリテーション医学会 「関節可動域表示ならびに測定法」より)

ただし、『労災補償障害認定必携』では、他動運動による測定値を採用することが適切でないものとして、「例えば、末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が可動するが、自動では可動できない場合、関節を可動させるとがまんできない程度の痛みが生じるために自動では可動できないと医学的に判断される場合等」が挙げられており、これは自賠責保険損害調査事務所における後遺障害等級の認定においても同様です。

医師が動かす他動運動では関節が曲がるものの、自分で動かす自動運動では関節が曲がらないということはよくありますので、自動運動による測定値で審査をしてもらった方が高い後遺障害等級が認定されやすいです。

自動運動による測定値にて後遺障害等級認定をしてもらうためには、神経伝導速度検査などの電気生理学検査を実施し、末梢神経損傷を立証することが必要になります。

後遺症被害者側専門の弁護士であれば、「この診断名・この症状の場合は、この検査を実施してもらって後遺障害診断書に書いてもらう必要がある」といったノウハウを有しています。

また、末梢神経損傷が立証できたとしても、自動運動による測定値の記入が後遺障害診断書になされていなければ、関節機能障害の後遺障害等級認定はなされません。

医師には自動値他動値ともに計測をしていただきましょう。

この事例では、右足関節の可動域の制限について、「両足関節の屈曲運動及び伸展運動について、それぞれ自動運動・他動運動の計8つの運動の可動域の計測をしていただき、10.上肢・下肢および手指・足指の障害欄の関節機能障害の欄にご記載ください。」といったお願いをする必要があります。

 

次に、この方は右足の足指すべてについて可動域制限が残っていました。

足指はそれぞれについて屈曲運動と伸展運動で可動域の測定をする必要があります。

健側・患側どちらも測定が必要ですから、この時点で5(足指の本数)×2(屈曲運動と伸展運動)×2(健側・患側)=20の測定が必要です。

そして、それぞれについて他動運動により計測した数値と自動運動により計測した数値が必要ですから、足指全てに可動域制限が残る場合に必要な計測項目は40です。

したがって、右足指の可動域の制限については、「両足指全ての屈曲運動及び伸展運動について、それぞれ自動運動・他動運動の計40の運動の可動域の計測をしていただき、10.上肢・下肢および手指・足指の障害欄の関節機能障害の欄にご記載ください。」といったお願いをする必要があります。

 

これはあくまで一例であり、実際には被害者の方一人一人に残存した後遺症の内容や程度により個別具体的な検査内容の指定をし、後遺障害診断書に確実に検査・記入してもらうことが必要になります。

こういった個別具体的な検査内容の指定は、後遺障害等級の認定を熟知した後遺症被害者専門弁護士にしかできません。ですので、後遺障害診断書の作成前に後遺症被害者専門弁護士へのご相談をおすすめしています。

 

④画像所見・検査結果等の記載漏れをしないようにしてもらう

画像所見・検査結果等については漏れなく記載してもらいましょう。

せっかく自覚症状の原因を他覚的(客観的)に証明するような所見があるにもかかわらずそれを後遺障害診断書に記載してもらえなければ、証明する所見がないものとして扱われてしまいます。

上でみた例でいうと、「各部位の後遺障害の内容」1.精神・神経の障害 他覚症状および検査結果の欄に「右総腓骨神経障害」の記載をしてもらうことが必須でした。

この記載がない場合、足指の関節機能障害は他動運動による測定値により後遺障害等級の認定がされます。

この方は他動運動による測定値は後遺障害等級の認定を受けることができるような数値ではありませんでした。

しかし、「右総腓骨神経障害」の記載があるだけですべてが変わります。

この記載は、この方が「末梢神経損傷を原因として関節を可動させる筋が弛緩性の麻痺となり、他動では関節が可動するが、自動では可動できない場合」に該当することを医師が証明した記載です。

つまり、この記載は、この方の右足指関節の機能障害は他動運動による測定値ではなく、自動運動による測定値によって後遺障害等級の認定がされるべきという証拠になります。

このように、画像所見・検査結果等はその記載があるだけで強力な証拠になる場合がありますので、もれなく記載してもらうようにしましょう。

そのために、後遺障害診断書の作成をお願いする前に、交通事故発生から症状固定時までに通院した他の病院も含めてどういった検査が行われていたかを把握し、必要に応じて記載をお願いしましょう。

 

後遺障害診断書について弁護士に相談するメリット―小杉法律事務所の取り組み―

メリット1:後遺障害診断書の作成前に治療期間中のすべての診断書を参照します

後遺障害診断書の傷病名欄には、治療期間中に診断されたすべての診断名を書いてもらうことが必要です。

ですので、後遺障害診断書の作成前に、後遺障害診断書を作成してもらう病院以外の病院も含め、すべての診断書を参照し、診断名をもれなく記載してもらうよう医師にお願いすることを原則的な取組みとしています。

メリット2:後遺障害診断書の作成前に被害者の方の自覚症状を正確に聴取します

後遺障害診断書の自覚症状欄は、被害者が直接自身の症状を後遺障害診断書に記載してもらうことができる唯一の場所であり、かつ後遺障害等級の認定においても最も重要な場所です。

ですので、後遺障害診断書の作成前に、被害者の方の自覚症状を正確に聴取した上で、適切な後遺障害等級の認定を受けられる記載をしてもらうよう医師にお願いしています。

メリット3:認定される可能性がある後遺障害等級すべてに必要な検査を医師にお願いします

後遺障害等級の認定基準はかなり複雑です。計測に漏れがあると適切な後遺障害等級の認定を受けることはできません。

ですので、後遺症被害者専門弁護士が被害者の方の症状について認定される可能性がある後遺障害等級を洗い出した上で、その認定に必要な検査すべてを医師にお願いしています。

メリット4:万が一不十分な記載しかされなかった場合でも、医師と面談を行うなどして修正をお願いします

小杉法律事務所に依頼していただく前に既に後遺障害診断書が作成されていたり、記載が不足していたりする場合には、医師に後遺障害診断書の修正をお願いしています。

しかし、医師の診断の修正を弁護士がお願いするというのは非常にリスクを伴うことです。医師によって一切受け付けないと言われることが十分にあり得ます。

ですので、小杉法律事務所では医師と面談をし、なぜ修正が必要なのかをしっかりと医師に説明し、納得していただいた上で修正をしていただいています。

小杉法律事務所では、数百件の医師面談の実績や、医師面談による後遺障害診断書の修正で等級を獲得した多くの事例があります。(小杉法律事務所の後遺障害診断書修正への取り組みについてはこちらのページから。)

 

後遺障害診断書については後遺症被害者専門弁護士に相談しよう!

木村治枝弁護士法律相談(小杉法律事務所)ここまで見てきたように、後遺障害診断書の作成を医師に依頼する際にはたくさんの注意点があります。

そしてその注意点は被害者の方一人一人のお身体に残存した後遺症によって変化します。

適切な後遺障害等級の認定を受けるためには、認定の基準や仕組みを熟知した後遺症被害者専門弁護士の介入が必須といえるでしょう。

 

小杉法律事務所では、後遺症被害者専門弁護士が無料でご相談を受けております。

適切な後遺障害等級の認定にご不安をお抱えの方は、ぜひ一度ご相談ください。後遺症被害者専門弁護士が的確なご回答を差し上げます。

後遺症被害者専門弁護士への無料のご相談はこちらのページから。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。