神経症状
疼痛等感覚障害
1 説明
「疼痛等感覚障害」は、「疼痛障害」と「疼痛以外の感覚障害」に分けられます。
「疼痛」は、通常、受傷部位の痛みを指します。まれに受傷部位より広範に疼痛が認められることがありますが、その原因は神経損傷であったり、CRPSなど特殊な性状の疼痛で後遺障害等級が判断される傾向にあります。
また、「疼痛以外の感覚障害」は、事故によって感覚神経が障害され、神経の抹消部分(もしくは通り道)にしびれが生じる状態を指します。
たとえば、顔面の頬が骨折した場合、骨折した部分には痛みが生じるのが通常です。他方で、骨折場所の頬には感覚をつかさどる神経が通っており、この神経が骨折によって障害されておれば、頬とその神経が走行する部分にしびれや感覚脱失が生じます。
2 後遺障害等級認定基準
後遺障害認定基準には、以下のとおり認定基準が設けられています。
(1)疼痛
第12級13号 | 通常の労務に服することはできるが、時には強度の疼痛のため、ある程度差し支えがあるもの |
第14級9号 | 通常の労務に服することはできるが、受傷部位にほとんど常時疼痛を残すもの |
(2)疼痛以外の感覚障害
第14級9号 | 疼痛以外の感覚の感覚障害が発現した場合は、その範囲が広いものに限り、第14級9号に認定することになる |
3 後遺障害等級認定の注意点
(1)等級該当性の前に因果関係の判断が必要~受傷機転~
たとえば、「事故で手首を負傷して、病院の先生が手首にTFCCの損傷がありこれが原因だと言っている」という場合、あたかも後遺障害が認定されそうです。
しかし、等級認定機関や保険会社は、事故前の被害者の手首の状態を知りません。そのため、「事故によって手首を負傷した事実」をまずは立証することになります。これを「受傷機転」といいます。さきほどの例でいうと、事故が生身の身体と自動車との事故であって、衝突後手をついて身体を支えたという事実が記載されている証拠があれば、受傷機転の立証は比較的簡単だと思います。一方で、さきほどの例として事故態様が追突であれば、ハンドルを握っていたなどの理由は想像はできますが、立証は困難なことが多いでしょう。
等級該当性の前に、因果関係、つまり、事故と傷病との因果関係を確認することが、まずは重要です。
(2)12級の要件該当性
疼痛障害における12級の要件該当性は、端的にいうと、①症状と②それを裏付ける他覚的所見の存在
(2)頚部の疼痛があるかを確認する
器質的損傷後のめまいの症状であれば、頚部の痛みがない場合もありますが、頚椎捻挫に伴うめまいは、頚部の痛みが併発しているのが通常です。頚椎捻挫に伴うめまいであるのに、めまいの症状のみを訴えて、頚部の痛みが診断書に反映されていない場合も散見されます。原因となる傷病があるか、きちんと訴えていて、診断書にも反映されているかは、確認しましょう。
(3)念のため頚部のMRI撮影を依頼する
まれに、椎骨動脈という頚部にある動脈が、少し狭窄されている被害者の方もおられます。そのような首をしている方の場合には、めまいの症状が発現し残りやすいと評価されるかもしれませんので、頚部の痛みとともにめまいの症状が残存した場合には、MRIの撮影を主治医の先生に依頼することを考えてみてください。
(4)めまいが初診時や事故から数日以内に発現していることを確認する
交通事故後のめまいの症状については、遅発するものもあるとされています。しかしながら、賠償の世界、特に、後遺障害等級認定においては、めまいの発現時が事故後1週間以上経過していれば、経過として不自然と評価されることもあります。
そのため、後遺障害の申請を行う前には、きちんとめまいが初診時もしくは事故後間もない時期から訴えているかを確認しておきましょう。
仮に事故から数週間空いてめまいが発現していれば、事故とめまいとの因果関係が争われやすくなります。そのような場合には、主治医の先生にめまいが遅発することもある旨の意見をいただいたり、めまい発現のメカニズムなどを聞いたほうが良いケースもあります。
むち打ちによる痛みや痺れなどについては、特集ページがありますので、こちらをご覧ください。