後遺障害等級の解説

神経系統の機能障害

頭痛

1 説明

頭痛は、交通事故に限らず、心因性、片頭痛など、様々な原因で発現するとされています。

交通事故に限れば、頭部外傷後の症状として発現する場合や、頚椎捻挫、いわゆるむち打ち症に伴って副次的に生じる障害として発現するケースもあります。頚椎捻挫に伴い副次的に頭痛、めまいや吐き気などが発現してしまう状態の患者に対しては、「バレ・リュー症候群」や「外傷性頚部症候群」という傷病名がつけられたりします。

2 後遺障害等級認定基準

後遺障害認定基準には、以下のとおり認定基準が設けられています。

第9級10号 通常の労務に服することはできるが激しい頭痛により、時には労働に従事することができなくなる場合があるため、就労可能な職種の範囲が相当な程度に制限されるもの
第12級12号 通常の労務に服することはできるが、時には労働に差し支える程度の強い頭痛がおこるもの
第14級9号 通常の労務に服することはできるが、頭痛が頻回に発現しやすくなったもの

以上のとおりとされていますが、頭痛は他者からは目に見えないことが多い症状ですので、「疼痛による労働又は日常生活の支障の程度を①疼痛の部位、②性状、③強度、④頻度、⑤持続期間及び⑥日内変動並びに⑦疼痛の原因となる他覚的所見により把握し、障害等級を認定すること」とされています。

3 後遺障害等級認定の注意点

(1)交通事故によって頭痛が発生したことを立証する

2で述べたとおり、頭痛は、目に見えないものです。そのため、等級認定機関や保険会社からすれば、事故によって頭痛が発生したのか否かは判りにくい状態にあります。

したがって、

・事故によって頭部への衝撃があったか

・事故後間もない時期頭痛を訴えていたか

というような事実を事故状況や初診時もしくは初診後間もない時期の診療録の記載によって、立証する必要があります。

(2)事故直後に脳のCTやMRIを撮影しているかを確認する

事故に遭った患者が頭痛を訴えている場合、病院としても、まずは脳内に出血がないか等を確認するのが通常です。

そのため、受傷直後に脳のCTやMRIを撮影していなければ、頭痛の一般的な治療経過ではないと判断される可能性もありますし、逆に、撮影していれば、頭部外傷を疑っていたことの証拠になります。

(3)①疼痛の部位、②性状、③強度、④頻度、⑤持続期間及び⑥日内変動並びに⑦疼痛の原因となる他覚的所見を診断してもらう

2で述べたとおり、頭痛の後遺障害該当性は、①~⑦を総合的に判断します。そのため、後遺障害診断書には①~⑦を念頭に、記載していただくのがベターです。仮に症状が多く後遺障害診断書に記載できない等の場合には、別添で作成していただくか、別途医療照会を行い先生の所見を仰ぐことも検討してもよいかもしれません。

この記事の監修者弁護士

小杉 晴洋 弁護士
小杉 晴洋

被害者側の損害賠償請求分野に特化。
死亡事故(刑事裁判の被害者参加含む。)や後遺障害等級の獲得を得意とする。
交通事故・学校事故・労災・介護事故などの損害賠償請求解決件数約1500件。

経歴
弁護士法人小杉法律事務所代表弁護士。
横浜市出身。明治大学法学部卒。中央大学法科大学院法務博士修了。

所属
横浜弁護士会(現「神奈川県弁護士会」)損害賠償研究会、福岡県弁護士会交通事故被害者サポート委員会に所属後、第一東京弁護士会に登録換え。